原作「墓場鬼太郎」はもう読みました。それをふまえてのアニメ「墓場鬼太郎」の感想です。

鬼太郎はいろんなバージョンがあるのですが、ここで「原作」と言っているのは角川文庫の「墓場鬼太郎」ことです。

それから「ゲゲゲの鬼太郎」はちくま文庫のシリーズしか読んだことがないので、ここで「ゲゲゲの鬼太郎」といったら「ちくま文庫版」だと思ってくださいね。


アニメージュ2008年2月号の「墓場鬼太郎」シリーズ構成・成田良美さんのコメントに苦笑いしましたが、同時に鬼太郎が悪い奴扱いされてたらイヤだなあと思っていたのでホッとしました。たしかに原作第1巻あたりの「墓場鬼太郎」は、鬼太郎の存在が不吉なもの扱いなんですよね。

たとえて言うなら「黒猫が前を横切ると不吉」という迷信がありますね。鬼太郎はその黒猫のような不吉な存在。黒猫自体はあなたに悪いことをしないけど、黒猫と出会ったあなたは不運な人。もれなく不幸がふりかかってきます、こんなノリです。

アニメスタッフもちゃんとわかってるんだな、と一安心。

オープニング「モノノケダンス」

オープニングのカットは原作まんがからいろいろ持ってきてます。元になっているカットの主な一覧。

  • チェック柄の布団に寝ている水木→幽霊一家
  • 「ドーン」のお坊さん→ボクは新入生
  • アンパンのねずみ男→霧の中のジョニー
  • あれ、ぼくのちょうちんよ→顔の中の敵
  • ベンチに座るシルクハットの男と鬼太郎→顔の中の敵
  • 男の耳から目玉おやじ→下宿屋
  • 空き家でロウソクを点す二人の男→怪奇一番勝負
  • 女の子に追いかけられる鬼太郎→吸血木と猫娘
  • ギターを弾く男→霧の中のジョニー

ほかにもいろいろあるので興味がある人は見比べてみては?でも比べてみると微妙に構図が違ったりセリフが違ったりしています。

例えばタイトルの「墓場鬼太郎」がでるところのねずみ男とパン屋の主人のやりとりの場面。アニメでは横に鬼太郎がいますが、原作ではいません。セリフもいくつかのコマのセリフをまとめたような言葉に変わっていますよ。

絵は原作のカットをそのまま流用したわけではなく、作画の橋本敬史さんがペン書きしたものらしいので納得。

第1話「鬼太郎誕生」感想

原作でも鬼太郎誕生のシーンは何度も登場していて、その度に内容が少しずつ異なっています。アニメで採用された鬼太郎誕生は「幽霊一家」のものではなくて、「おかしな奴」の鬼太郎誕生シーンですね。

血液のくだりは今ではいろいろまずいので、鬼太郎の母のファンタジーな力(?)のせいで患者さんが幽霊になってます。

「原因と思われる、疑わしい人物」の住所を社長から教えられて水木が…という流れに。今の時代に放送できない内容はムリしてやることはないと思うのですが、ママンのミラクルパワーはちょっと強引かなー。

人間キャラの絵柄にちょっと違和感があったのは目が大きいせいかな。原作はもうちょっと目が小さいというかあっさりした絵なので。

原作と違って、例の切符に関して水木と鬼太郎の間にやりとりがあるのですが、ここはやや違和感。原作だと鬼太郎は水木が切符を使ったことに後から気づくのですが、アニメ鬼太郎はかなり感じ悪いです。

水木の母とのやりとりも、原作は鬼太郎の話を信じない水木母に「信用しないなら実際行って見てもらえば」という流れ。

アニメは区切りのいいところで1話に収めようとして端折ってるせいで、鬼太郎も目玉親父も人間をだまして陥れているように見えるのは残念です。結果は同じでもそこまでワルじゃないですってば。

怪奇風味を強調しようとしているのかな。でもイマドキの感覚だと、鬼太郎はナンセンスまんがに近いような気がするのですが。原作はいろいろなテイストを含んでいるから、読者がどの持ち味を強くうけとるかでかなり印象が変わってくるんですよね。

背景などの美術はがんばっているかんじです。

第2話「夜叉対ドラキュラ四世」感想

鬼太郎とネズミ男遭遇。このエピソードも原作の「おかしな奴」からもってきてますね。

ふはっ、社長さんなぜそんなあやしい宿屋に泊まる?お金あるのに。やっぱり原作のナンセンスというかコミカルな描写が削られていて寂しいかな。

ドラキュラ4代目と夜叉の名乗り合いが妙にカッコいいですね。

ドラキュラ:私を誰だと思っている。300年前ヨーロッパを恐怖のどん底にたたきこんだ、かのドラキュラ一族の4代目だ!
夜叉:一千年前はるばる中国からやってきた吸血鬼、泣く子もだまる夜叉とは俺様のことだ!

原作にはない名乗りですが、貸本まんがの登場人物紹介をうまく加工してる印象です。

その後の「横取りは許さん、あれは私が見つけた獲物だ」「ここは人間をおびき寄せ、太らせて食べるために俺が用意した下宿屋だ。あれは俺の獲物だ!」のやりとりもよかったです。

この言い分だと夜叉に軍配。だってこの下宿屋、食事・宿代タダ。ご飯も「もっと盛りなさい」とか夜叉が指示しているしなあ。アニメでこういうご飯の盛り方を見るのも久しぶり。

だいたいドラキュラはこの下宿屋の客なんですよ。タダで泊まっておいて「横取りは許さん」もないですよ。

水木は鬼太郎に案内されてなんとか地獄から脱出。社長さんのくだりに関しては、やっぱりアニメの方が黒いかんじ。社長のセリフのせいで「(鬼太郎に)だまされた」感がでちゃってます。

話は余分な枝葉を落としてスッキリまとめているけれど、そんなセリフを入れるなら「『鬼太郎の魂』をビニール製のシャボン玉の中に入れて大空にすててしまおうとおもう」みたいなヘンなセリフも拾ってほしかったかな。微妙に尺が足りないのかも。

お金をネズミ男にかっさらわれて、ぽかーんとしている鬼太郎はかわいくてよかったですけどね。


1・2話はDVD第1巻に収録されています。「オン・エアできなかった未放送カットをそのまま収録」だとか。うわー心当たりがありすぎて、どこのことを言ってるのかわからなーい!!

9~11話はDVD4巻に収録されています。

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