角川書店の貸本まんが復刻版「墓場鬼太郎」全6巻の感想です。このページでは1巻、2巻の感想を書いています。残りは次ページ以降で。

各話の冒頭に少しだけカラーページがあって、貸本まんがの色合いになってます。

アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」では「仕事も何にもない」と歌っているし、原作漫画でもあくせくせずにのんびり生きている「ゲゲゲの鬼太郎」。

それに対して「墓場鬼太郎」では、コッペパンのために働いたり「あの世保険」を勧誘してまわるなど、生活にあくせく。ねずみ男に負けないくらい物欲の強そうな鬼太郎です。

まだ子供だからか、両親を亡くした鬼太郎が人間社会の中で生きていこうと奮闘するストーリー。かなりしたたかな鬼太郎なので、ゲゲゲの鬼太郎しか知らない人にはギャップがあるかもしれませんね。


ストーリーは怪奇ムードが強いですが、すでに大人になってからアニメ化直前(2007年)に読んだ身としては、これはギャグです。

友達で「ゲゲゲの鬼太郎」の文庫を持っていた人も、吉田戦車さんの「伝染るんです」や中川いさみさんの「くまのプー太郎」なんかと一緒に並べていたから、そういう読み方をしてたんじゃないかなー。

私が感じている面白さは

  • 怪奇ムードと並んでナンセンス(コミカル)描写
  • (今の感覚では)ていねいな言葉遣いとそれがかもしだす独特な会話のセンス
  • 常識のように語られるふしぎ理論(←いろいろツッコミをいれたくなる楽しさ)
  • 政治・お金に関するシビアなセリフ

このくらい。「いやいや、他にもあるよ!」という人もいるでしょう。怪奇とナンセンスのどちらに強く魅力を感じるかによって、見方も楽しみ方も変わると思いますよ。

セリフの古さは江戸川乱歩さんの「少年探偵団」シリーズを髣髴とさせる古さです。レトロな雰囲気もいいですよ。

墓場鬼太郎第1巻感想「幽霊一家・地獄の片道切符・下宿屋・あう時はいつも死人」

墓場鬼太郎 (1) (角川文庫―貸本まんが復刻版 (み18-7))
墓場鬼太郎 (1) (角川文庫―貸本まんが復刻版 (み18-7))

第1巻は兎月書房版「妖奇伝」より「幽霊一家」「幽霊一家 墓場鬼太郎」の2本、兎月書房版「墓場鬼太郎」より「地獄の片道切符」「下宿屋」「あう時はいつも死人」の3本が収録されています。巻末解説は水木しげる先生。

ストーリーは1エピソード完結じゃなくて、複数の話にまたがって続いています。

鬼太郎誕生のくだりは何度も重複して登場していますが、幽霊一家~地獄の片道切符は「水木が切符を使う+その母のエピソード」までです。

目玉になる前の鬼太郎の父親とか、いろいろわかります。お父さん案外がっしりした体だったんですよ。

原作漫画の「ゲゲゲの鬼太郎」にも同じような話が載っていますが、アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」しか見てない人には珍しいかも。

アニメ「墓場鬼太郎」では血液関連についてはふれてませんし、鬼太郎誕生のエピソードも5巻収録の「おかしな奴」の方を採用しています。そんなわけで、アニメとはちょっと違う内容です。


下宿屋~あう時はいつも死人は、夜叉VS吸血鬼4世と水木の会社の社長の話。アニメではエピソードがだいぶ削られているので細部はかなり違います。

「ビニール製のシャボン」に入れて鬼太郎の魂をとばすシーンは一大危機のシリアスな場面として描かれていますが、「いや、そのうち地面に落ちるから逃げられる…」とツッコミたい。このギャップがいいですね。


墓場鬼太郎第2巻感想「吸血木と猫娘・地獄の散歩道」

墓場鬼太郎 (2) 貸本まんが復刻版 (角川文庫)
墓場鬼太郎 (2) 貸本まんが復刻版 (角川文庫)

第2巻は三洋社版「鬼太郎夜話」より「吸血木と猫娘」「地獄の散歩道」の2本が収録されています。巻末解説は京極夏彦さん。

1巻から伏線を張っていた吸血木と、鬼太郎は水木が下宿した「ねこ屋」の娘・寝子の話。寝子エピソードはこの巻で終了ですが、吸血木はまだひっぱります。

寝子はのちの猫娘の原型ですね。ロングヘアの女の子です。鬼太郎は目玉おやじの作ったお弁当を持って一緒に学校に通ったり。

猫娘になっちゃったのは「家業のせい」という説明がされてます。今の若い人にはピンとこないかも知れないけど昔は縁日などで「親の因果が子に報い、生まれいでたる○○娘」というような口上の見世物小屋なんかがあったんですよ。

私の子供の頃にはほとんどなくなってたし、小屋に入ったこともないからよく知らないんですけどそういうイメージじゃないかなと思ってます。

寝子に頭をかじられて脳ミソがちょっと足りなくなる(見た目にも頭がちょっぴり欠けてる)ねずみ男とか、ニセ鬼太郎登場とかいろいろヘンです。ねずみ男の「今ニセモノの時代だぜ 永仁のツボ(←当時の古陶器贋作事件)をみろ」もすごい。

チャンチャンコを人ごみですりかえられて模様が替わったことを指摘された鬼太郎の「人にもまれたから模様がずれたんでしょう」とか、ニセ鬼太郎に「ソンナ気の弱い事では国宝(←人間国宝)になれないぞ」とはっぱをかけるねずみ男もすごい。

「地獄の散歩道」ではビート族の話がメインですが、最後の方で物の怪が登場して吸血木の話につながります。

この「物の怪」、「地獄の散歩道」で登場したときはあずきとぎみたいな顔をしていますが、次の「水神様が町へやってきた」ではだんだん顔が縦長になってきてあまめはぎみたいな絵になってきます…。このユルさが鬼太郎だなあというかんじ。

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