「四畳半神話大系オフィシャルガイド」感想

アニメ雑誌に掲載された版権イラスト集です。

そもそも「四畳半神話大系」は1クール11話。アニメ雑誌に描き下ろされたイラスト自体が少ないので、この本に収録された版権イラストも数枚です。

中村佑介さんのキャラクター原案イラストを使ったもの以外は、キャラクターデザインの伊東伸高さんの絵だと思います。

私も全部のアニメ雑誌を細かくチェックしているわけではないので知らないだけかもしれませんが、1枚未見のイラストがありました。この本用の描き下ろしかな?

難点を言わせてもらえば、見開きで1枚のイラストを載せているのでノド（本の真ん中）の部分が見づらい事。

本がB5よりも小さいので、ページの右か左にイラストを寄せたら小さくなってしまうからだと思いますが、少し残念。

ついでに言うと、イラストの上に文章がのっている事。雑誌掲載時だってイラストの上に文章が載ってるんだからいいじゃん!! と言う人もいるでしょうが、せっかくだからイラストだけで楽しみたかったなと。

もう一つ言わせてもらえば、私が知ってるだけでもアニメージュに掲載されたイラストが1枚抜けてる事。どこかの宣伝文で「雑誌掲載版権イラスト全収録！」みたいなアオリ文を見たような気がするんですが…? 私の勘違いでそういう宣伝がなかったなら、ちょっと残念ですが別にいいと思います（笑）。

アニメ「四畳半神話大系」全11話の各話ストーリー紹介。

名場面カット集と名セリフ集で綴る一般的な構成ですが、解説、湯浅監督談話、湯浅監督イメージスケッチ（カラー）もついてるところがステキです。

監督のイメージスケッチは他の媒体で目にした絵もありますが、未見のものもあったのでよかったです。

カラー7ページで原作者・森見登美彦さんとアニメで明石さんの声を担当した坂本真綾さんの対談。

坂本さんが森見さんの小説のファンだったり、森見さんが同僚に「坂本真綾さんのサイン」を頼まれていたり、異業種分野でありがちな対談になってました（笑）。

メインキャラクターから名前のない各回ゲスト（ソレイユ部員や「ほんわか」部員、福猫飯店構成員ほか）まで紹介されてます。

メインキャラクターに関しては

• 湯浅政明監督のキャラクタースケッチ
• 中村佑介さんのキャラクター原案（検討案～決定稿）
• 伊東伸高さんのキャラクター設定資料

などが載ってます。

四畳半神話大系 第1巻（初回限定生産版） [DVD]や四畳半神話大系 第1巻（初回限定生産版） [Blu-ray]には「豪華ブックレット(中村佑介キャラクター原案イラスト完全収録)」が初回限定特典としてついているようですが、DVDもBlu-rayも買っていない身としては、こうやってアニメの設定画とともに本にまとめてくれたのはよかったです。

アニメ用のキャラクター設定画はカラーは全身前程度。基本的に線画多め。表情集や各話の服装は「私」、明石さん、小津以外は省略気味です。

とはいえ、基本的な設定はほぼあるのでまあいいんじゃないでしょうか。

小津は表情集、浴衣、女装、回想シーンの服、自転車にこやか整理軍のコート姿、本当の姿もあるので堪能できます。

明石さんも通常の水色ワンピース、回想シーンの白ワンピ、3話のサイクルジャージにポニテとウィンドブレーカーも。ウィンドブレーカーは実際のアディダス製らしいですが、明石さん仕様で売ってるわけではなさそうです（笑）。

アニメ1話の回想シーンで登場した、モリカゲシャツの「私」のTシャツと明石さんの白ブラウス（リアル服の写真じゃなくてアニメ設定画）もカラーで載ってます。明石さんのはチュニック丈でかわいいですね。

湯浅監督のキャラクタースケッチを中村佑介さんのキャラクター原案を見比べると、いい仕事してるなーと感じました。

湯浅監督のキャラクターの服装や髪形は、「いつの時代の大学生だよ!?」と思うくらい古いです。現代的でテレビ映えする華のあるデザインに変わったのは、イラストレーターの中村さんの力ですね。

もちろん中村さんのデザインも城ヶ崎先輩や相島先輩の第一稿は「どうしてこうなった!?」というかんじですが（笑）。そのへんは2010年8月下旬に難波でやってた中村佑介さんのトークショーで聞いたので納得済みです。

難点を言えば、設定画の絵の大きさが一部「小さい! 」とかんじるものがちらほら。本の大きさが小さいから仕方ないですが、もう一回り大きくしてほしかったです。

設定画の絵の量に関してはまあこのくらいでも…と思えるのですけどね。

伊東伸高さんが厳選したという原画集。

6ページにわたって原画が詰まってます。

9話「秘密機関『福猫飯店』」の小津と小日向さんの空中ランデブーの原画集が圧巻です。

小津がハサミを取り出して糸を切って、小日向さんと手をつないで落ちていくあたりの原画集。いいですねー。

最終話「四畳半世紀の終わり」で「私」が外に出てから人々の歩く姿が刻々と別人になったり服装が変わったりして切り替わっていくシーンも。

おじぎをしている人が頭をあげる途中時点で別人になったり別服になったり、それでいて動作自体はシーンごとに大きく違和感がないような動き。すごいです。

背景美術集、美術ボード集はカラーです。美術監督の上原伸一さんの解説付き。

ロケハン写真（とは書いてないけど、そう思われる写真）もついてます。

四畳半神話体系は美術も色合いも好きだったので、いろいろ見ることができるのはうれしいです。

アニメスタッフのインタビュー集。一応お題というか、問いに対する答えの形式になってます。でもQ&Aみたいな短い返答ではないので、各人わりと読み応え有りますよ。

• 伊東伸高（キャラクターデザイン・総作画監督 ）
• 横山彰利（絵コンテ・演出）
• 三原三千夫、牧原亮太郎（絵コンテ・演出・作画監督）、夏目真悟（絵コンテ・演出）
• 辻田邦夫（色彩設計）
• 大島ミチル（音楽）
• 木村絵理子（音響監督）
• 浅沼晋太郎（「私」役）
• 上田誠（シリーズ構成・脚本）
• 湯浅政明（監督・脚本・絵コンテ・演出）

文章だけではなく、キャラクターデザインの伊東伸高のページにはキャラクターラフがあったり、絵コンテ担当者のページに絵コンテ抜粋があったりします。

「四畳半神話体系」はキャラクターの声の演技指導も担当する音響監督さんが大変だろうと思っていましたが、インタビュー面白かったです。

小津の声は「不気味な顔にひっぱられずに、軽すぎずやりすぎず賢く」という監督のオーダーもすごいですが、それを考えると吉野裕行さんは上手く演じてましたね。

浅沼晋太郎さんの「四畳半日記」も面白かったです。ノイタミナの主人公が決まっての喜びやパルコショップでいろいろグッズを買ってはしゃぐ34歳。いいですねー（笑）。

第11話「四畳半世紀の終わり」の絵コンテAパート全掲載。もちろん絵コンテ担当は湯浅政明監督。

かなりラフ。絵も小さいので絵コンテの文字が読みにくいのですが…気合で読みましょう。面白いです。