原作は未読ですが、アニメ「四畳半神話大系」の感想を書いてます。すでに後半の話も視聴済の状況で書いてます。そんなわけでネタばれ多いので要注意。

とりあえずアニメ四畳半神話大系の第1話「テニスサークル『キューピット』」の感想です。

「四畳半神話大系」は主人公の「私(声:浅沼晋太郎さん)」がナレーション(といっても私主観のモノローグ風)も兼任しているので、とにかく主人公がよくしゃべってるアニメです。

テンポのいい早口セリフがこのアニメの魅力の一つですね。

湯浅政明監督のアニメといえば作画重視の印象ですが、「四畳半神話大系」はシリーズ構成の上田さんがうまく原作の語り口をアニメに移しているみたいですね。語り(ナレーション)にはまるとクセになります(笑)。

四畳半神話大系 第1話「テニスサークル『キューピット』」感想

OP前のアバンで下鴨神社の近くにある屋台「猫ラーメン」で「神様(声:藤原啓治さん)」を名乗る男に出会う、主人公の「私」。男は「私」と同じ下宿の下鴨幽水荘の2階に住む住人(「私」は1階)。

その「神様」は「私」か「私」の悪友の小津(声:吉野裕行さん)のどちらかを、「私」の知っている明石さん(声:坂本真綾さん)という女性と縁結びすると言い出すのでした…。


物語は主人公の「私」が大学に入学して大学の門をくぐり、数々のサークルから勧誘される場面から始まります。

「高校の頃は特にクラブ活動もせず、同じような非活動的な男達とくすぶっているばかり」だった「私」が選んだのはテニスサークル。

ナレーション:黒髪の乙女達とさわやかに汗を流しながら恋のラリーを打ち合うのだ! そう考えていた私は手の施しようのないアホだった。

まあ最初は誰もがそういうことを考えますよね、大学に入った当初は。

受験勉強が終わって新生活。これからはバイトにサークル活動に友情に恋…。高校時代は「受験」という大義名分に後回しになっていた諸々を、誰に気兼ねすることもなくできるのだと。

でも現実はそんなに甘くないのでした(笑)。

ナレーション:1回生の夏、まだそれなりにばら色であった私の脳みそを現実という鋭い刃(やいば)が一閃した。 友達100人できるのも悪くないとたかをくくっていたが、人とさわやかに交流することがいかに難しいか思い知らされた。
(中略)
柔軟な社交性を身につけようにも、そもそも会話の中に入れない。
会話に加わるための社交性をどこかよそで身につけてくる必要があったと気づいたときには
既に手遅れであり私はサークルで居場所を失っていた。

「私」は運動が苦手なだけじゃなく、コミュニケーションも苦手のようです。特に若い男の人はどうでもいいような世間話が上手くできない人っていますね。

相手の顔色をうかがいつつ興味がありそうな話題を振ったり、あいづちをうったり。一見ムダに見える場合もあるけど、そういう積み重ねが会話の基本。だから高校時代までに会話経験の蓄積がないと、大学に入ってかなりの差がつくのはわかりますね。

「私」はサークルで浮いてることに気づいているから、鈍感というわけではなさそうです。

ナレーション:そのとき私の傍らに、ひどく縁起の悪そうな顔をした不気味な男が立っていた。
「私」:これは繊細な私だけに見える地獄からの使者か!?
小津:あなたひどいことおっしゃる。ご安心ください。ぼくはあなたの同士ですよ。
ナレーション:これがオズとのファーストコンタクトでありワーストコンタクトでもあった。

私と小津の出会いはこれから毎回少しずつ形を変えて繰り返されます。私は小津の外見を妖怪視。性格もずいぶんこき下ろしてます。

ナレーション:夜道であえば10人中8人が妖怪と間違え、2人は妖怪と納得する。
他人の不幸をおかずにして飯が食える、およそほめるべきところが1つもない男だ。

嫌いなら離れればいいのにそれはしない。どこか矛盾してる「私」。

そもそもそういう性格の人間と気が合うということは、要するに似たもの同士ということでは?

そんな私と小津はいつしかサークル内で火のないところに煙をたててカップルを破局させる「黒いキューピッド」としての活動を開始。

サークルをやめた後も、大学で黒いキューピッド活動を続ける男2人…実に不毛な学生生活の無駄遣いです(笑)。

その夜も鴨川デルタのコンパ会場を狙って、対岸の夜闇に潜む「私」と小津。

私:くっつくな!
小津:だって夜風が冷たいんだもの
私:この寂しがりやさんが!

こんなかんじで、傍目には気の置けない仲間とのアホな会話に見えるんですよねー。「私」はナレーションでは小津のことを嫌っているように言うけれど、結構仲良しさんに見えますよね(笑)。

コンパ会場に明石さんがいることに気づいて、コンパ会場を襲うことをやめないかと言い出す「私」を小津がたきつける。

小津:黒いキューピッドとしての誇りはどうしました? (中略) 世間の目を気にして信念を折り曲げるんですか? 僕も身も心もささげた人はそんな人じゃありませんねー。(以下略)

小津にあおられ、「私」はその気になって名乗りをあげ、コンパ会場を花火で爆撃して大混乱に。

その場を逃げ出しつつ、それまでの「黒いキューピッド」の活動を思い返す私。たくさんのカップルを破局させ、恨みを買い、それでも活動をやめなかったことへの後悔の念。

ナレーション:私は負けなかった。負ける事ができなかった。
     しかし負けていたほうが、私もみんなも幸せになれたに違いない。
     小津は幸せにならなくてもよい!

それに気づいたなら止めればいいのに、「私」は妙なところで頑固。生き方を変えられない不器用なタイプですね。

さらに木屋町で怪しげな妖気をたれながしている老婆で出会ったときことを思い出す「私」。

占い婆:あなたは大変真面目で才能もおありのようじゃし。
ナレーション:老婆の慧眼に私は早くも脱帽した。

「私」はみえみえのお世辞にも弱くて、単純というか純真というか。ただでさえ京都人との会話は難しいのに、京都でやっていけないんじゃないかと心配になりますね(笑)。

占い婆:とにかく好機を逃さないことが肝心じゃ。

誰にでも当てはまりそうなことを言われて占料1,000円とられる「私」。

そこにばったり行き会った小津。見ると、小津は羽貫さん(この時点では「私」にとっては見知らぬ女性)とべったり抱き合いながら歩いてきたらしい。

鴨川デルタのコンパ会場を襲ったあと、焼き肉屋で小津の口にしいたけをつっこみつつ先日の女性の件について問いただす「私」。もちろん小津の野菜嫌いを知っての上での所業。

小津:むぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅ
「私」:この破廉恥野郎! あのモテモテぶりはどういうことだ!
小津:あなたちょっと八つ当たりがすぎますよ。

私は小津には容赦ないというか、全く遠慮してません。小津は裏表あるし行動はアレですが言葉遣いはよくて人当たりもいいタイプ。なんというか、いかにも京都人くさい(笑)。

これ以降の回で小津も実家から通ってるわけではなく、マンションに一人暮らしだという話が出てきます。小津は京都人ではない可能性もありますが、どうにも京都人のニオイがする…(笑)。

先日の女性は歯科衛生士。歯の治療で知り合ったのだと話す小津。あくまで患者と歯科衛生士で、恋人同士ではないとのこと。

小津:あなたもどうです?あんな若い女性が指を口につっこんでくれる機会なんて、
   あなたには一生ないでしょ。
「私」:一緒にするな、そこまで落ちたくない。

…「私」はプライドだけは無駄に高いです。そういう小さな機会(?)を逃さず捕まえてこそ、いつか大きな機会に恵まれるというのに。

歯科衛生士さん本人じゃなくても、本人の友達や後輩を紹介してもらうとかするんですよ!! そうやって人脈を広げていけばいいのに…。

そんな「私」に「明石さんとどうなっているのか」訊ねる小津。小津は「明石さんは『あなた』を理解できそうだ」と言い、好機だと勧めているのに、それに対する「私」の答え。

「私」:俺は俺のような人間を理解できる人より、「ふはふはー」として美しいものだけで頭がいっぱいの黒髪の乙女がいーい!

わかってない…わかってないよ、「私」!! 自分のことを理解してくれる人の方がいいに決まってるのに。たぶん「私」は「理解はしてくれなくてもいい。受け入れてくれればいい」と思ってるんだろうけど、相手が多少なりとも理解してくれない場合はちょっとした食い違いで破局することが多い!!

そしてここで小津の決め台詞。

小津:どうせあなたはどんな道を選んだって、今みたいな有様になっちまうんだ。
   いずれにせよ、僕はあなたに出会って全力であなたをダメにします。

このセリフは少々形を変えることがあっても、これからほぼ毎回でてきます。

そんなことを言う小津に、どうしてつきまとうのかと問う「私」。

小津:僕なりの愛ですよ。我々は運命の黒い糸で結ばれてるというわけです。

ここで出てくる「小津にぐるぐるに巻きつかれて日本海溝に沈む『私』」のビジョンが笑えます。

そんな妄想にふけっているうちにふと気がつくと、小津がいなくなって代わりになぜか明石さんが小津の席に!?

なんとこの焼肉店は、先ほど「私」と小津の「黒いキューピッド」が襲ったバードマン・サークルのコンパの二次会会場(笑)。他のサークルメンバーに気づかれないうちに裏口から逃げるようにすすめる明石さん。

明石さんとのなれそめを回想する「私」。明石さんは工学部1回生で、「私」より年下(「私」は3回生)。知り合ったのは下鴨古本市のバイト。

バイトの男:明石さんは休みの日って何をしてるの?
明石さん:なんでそんなことあなたにいわなきゃいけないの?
(中略)
ナレーション:私は彼女にそのまま君の道をひたはしれ! と熱いエールを送った。

明石さんははっきり性格で、理路整然とした話し方をする理知的なタイプ。そしてあいまいな会話をしないタイプ。

「私」好みの女の子らしい女の子じゃないけれど、気になる女性ではあるらしい。

明石さんは「私」が恋人達の間に波風たてて仲を引き裂く「黒いキューピッド」をやっているのも知っているけれど、「私」の事を嫌っているわけではない様子。

「私」は口では「寂しさから恋人を求める」ことはよくないことである云々と屁理屈をこねているけれど、ちょっぴりうらやましさと嫉妬も入り混じった感情だったりするわけで。黒いキューピッドの活動は全くもって褒められるようなことではないし、自慢にもならないわけで。

もちろんそんなことも「私」はわかっているけど、そういうことは棚上げしつつ、黒いキューピッドの活動をやめられない。明石さんはたぶんそんな「私」の複雑な感情も気づいているんだと思いますね。

黒いキューピッドの活動を「アホな事」の一言で許容してくれる女性は非常に稀。黒いキューピッドの活動は一言で言って「余計なお世話」だし、正義感の強い女性ならそういうはた迷惑な行為を許さないだろうから。

小津はそういう明石さんの人となりも含めて「明石さんはあなたを理解できそうな数少ない女性だ」と言っているのだと思うけど、鈍感な「私」はたぶんそこまで理解できていないはず。

とにかくその場を明石さんに任せて「私」が下宿に帰ると、大きなカステラを持って部屋で待っていた小津。

小津:大きなカステラを一人で食べるというのは孤独の極地ですからね。
   人恋しさをしみじみ味わってほしく…

怒って小津を追い出す「私」。しかしその大きなカステラを切り分けながら、なりゆきで明石さんの事を思う「私」。

昨晩猫ラーメンの屋台で出会った「神」に縁結びを頼めば、明石さんと「私」はうまくいく…?

けれども今まで自分がやってきた黒いキューピッドの活動と矛盾する行動であることに悩む「私」。

ナレーション:せつな的な寂しさから赤の他人を求めるなど、私の信条に反する。

要するに恋愛というのは燃え上がるような想いから始まるものであって、お互いの寂しさや人恋しさから男女がくっつくというのは許せないものらしいです、「私」には。

「私」は理想というか理念先行タイプ? 頭でっかちなのか、理想主義なのか、はたまた純情なのか? たぶんそれらがごちゃまぜになってるんだと思います。

そこにまたまた明石さんとの回想シーン。明石さんと蛾ともちぐまんのシーン。額に蛾がとまって悲鳴をあげる明石さん。

明石さん:ぎょえええええー
「私」:はなすんだ、はなせ
明石さん:むにゅっとしてました。むにゅっと

そして思い出した明石さんとの「約束」。

結局一晩悩んだ挙句、神を名乗る男に「私」と明石さんの縁結びを頼みに行く「私」。

五山の送り火の夜、人ごみの中、賀茂大橋の上に立つ神様(自称)と私。明石さんを逢引に誘えという神様。何もしなくても神様が縁結びをしてくれると思ったのに、当てが外れて焦る「私」。

「私」:出雲に行って縁結びしてくれるんじゃないのか? これだとただの正攻法ではないか!

橋の上で明石さんと出会って、普通に世間話だけして立ち去ろうとする「私」。意識しすぎて普段のように話せず、カチコチ…。

そこになぜかたくさんの男達に追われる女装姿の小津登場。

小津:神の言葉に逆らわず、とっとと恋路を走りやがれ!

好機をつかめ、さもないと欄干から川へ飛び降りるという小津。

橋から落ちる小津。巻き添えをくって橋から落とされる「私」。

こんなことになった今までの学生生活を後悔したとき、時計台の時計がぐるぐると逆に回りだして…。

小津の追っ手の中には「裏切り者」と叫ぶ城ヶ崎先輩(声:諏訪部順一さん)、「もう逃げられんぞ」と叫ぶ相島(声:佐藤せつじさん)。

この2人については次回から登場するので、以降の話でおいおい事情がつかめてくると思います。

今回「神様」と名乗って「私」の前に登場した男は、樋口(師匠)という名前。以降の回で「私」と直接絡みがある場合は名前あり、小津の師匠として出てくるときは「私」が名前を知らない状態で登場しますよ。

今回小津は樋口師匠の弟子ですが、「私」はそうではないのでよく知らない人として登場してますね。

これから「私」が大学入学時点で別の選択をした場合の、少しずつ違った並行世界の話になっていきます。

今回も1回生のときに小日向さんにふられてるとか、別の話のときと少し違った話がでてきているので、話が進んでから後で見返すといろいろわかって面白いですよ。


ところで「私」は小津を否定的に見てますが、小津は頭でっかちでプライドが高い「私」を理解してつきあってくれる、すごくいい友人のような気がするんですが。

賀茂大橋の上で明石さんを誘えない「私」をちゃかしも、ひやかしもせず、「今までやってきたことと矛盾してる」と糾弾もせず、「とっとと恋路を走りやがれ! 」と背中を押してくれる悪友。

「私」自身ですら、自分の過去の行動との矛盾を後ろめたく思っているのに、そんなことは棚上げして幸せになれと言ってくれてるわけですから。友情に厚いですよね、小津は。

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