アニメ映画「時をかける少女」の背景美術のアートブック。副題「山本二三と絵映舎(かいえいしゃ)の世界」の名前のとおり、美術監督・山本二三さんのラフボード、美術設定線画とその解説などです。

山本二三さんといえばスタジオジブリの「天空の城ラピュタ」他、ジブリ関連の仕事が有名。個人的には「名探偵ホームズ」のアート本「THE ART OF HOLMES」でみた緻密な美術設定の印象が強い人です。「ファンタジックチルドレン」の美術も山本二三さんですね。ちなみに「時かけ」の制作はマッドハウス。

ラフボード・美術設定集(カラーページ)

山本二三さんの絵です。「ラフ」といいますが、本番の背景を描く前に色や表現の確認のために描く絵…という意味で「ラフボード」と呼ばれるもの。きちんと色も塗られているので、ラフと聞いて一般的にイメージする「あたり」や「遊び線」が残った絵とは違いますよ。

あの夕焼けの河原のシーンの絵でいろいろ思い出してちょっとほろり。

美術設定集は鉛筆で描いた美術に、薄く色鉛筆で色をつけたものです。個人的にはこの鉛筆画の方が好きです。上手い人の鉛筆画はいいですよね。

それぞれの絵には解説もついています(一部、モノクロページに解説アリ)。コンピュータ合成の話など、アニメ技術的なことも絵(素材)と文章でわかりやすく解説されているので、なかなか興味深いですよ。

本編画像の詰め合わせページや絵映舎スタッフの背景美術も少しあります。

美術解説

アニメの技術に関してはうとい方なので、解説の内容がどの程度の的を射たものなのかはなんともいいようがありませんが、なかなかマジメな内容です。けれどもさほど硬すぎない語り口というか、わかりやすい解説でわりとよかったですよ。

「アルプスの少女ハイジ」「赤毛のアン」までさかのぼった、アニメの背景美術の役割といった話がでてくるとは思ってなかったのでちょっと意外でしたけどね。

インタビュー、スタッフコメント

山本二三×増山修×稲葉邦彦インタビュー6ページ。絵映舎のスタッフコメントが2ページ。インタビューは美術制作裏話が満載ですね。カラオケ・ボックスのシーンがそんなに大変だったなんて…。何気なく笑いながら見ているシーンでもいろいろ苦労があるんですね。

欲をいえば絵が少ないというわけじゃないけれど、あと少し絵が欲しかったかも。同じアートブックというジャンルということで「鉄コン筋クリート ART BOOK」などと比べると、ぎっしり感がいささか足りないかんじ。このアートブックの方が解説はしっかりしているので、仕方がないかな。

基本的に解説付き美術画集という内容なので、「時かけ」が好きでもアニメの背景美術に興味がない人には向きませんが、美術好きなら楽しめると思います。

タイトル:時をかける少女ARTBOOK―山本二三と絵映舎の世界
出版社・発売時期:角川書店(2007-08)
ページ数:111
総合評価:4

内容紹介

  • アニメ映画「時をかける少女」のアートブック
  • ラフボード
  • 美術設定集
  • 美術解説
  • 山本二三×増山修×稲葉邦彦インタビュー(座談会形式)
  • 絵映舎のスタッフコメント
  • …etc.

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