毎度の事ながら、ジブリのロマンアルバムは宮崎駿さん以外の監督作品については、ちょっと薄味ですね(笑)。それでもスタッフインタビューなんかは、角川のガイドブックよりはしっかり切り込んでる感があっていいですよ。
それにA4縦の大判本。フィルムストーリーとキャラクター設定資料+美術設定、そしてたくさんのスタッフインタビューでこのお値段はお買い得です。
では内容紹介。
- フィルムストーリー(カラー)
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「コクリコ坂から」の本編画像はふんだんに使っているフィルムストーリー。物語は最初から最後まで全部載ってます。もちろんカラー。映画未見の人はネタバレ注意。
このロマンアルバムの約1/3のページを占めています。名場面集としても使えるのでいいかんじ。
- キャラクター紹介(カラー)
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「コクリコ坂から」に登場したキャラクターの紹介。メインキャラクター、サブキャラクター。
各キャラクターの画像もあるので、名前とキャラがわかりやすいです。モブかと思われたカルチェラタンの住人(というか各部室メンバー)の名前が設定されてました。ただしプロフィールの説明はメインキャラもサブキャラもあっさり気味。
それから映画を一度見ただけではわかりにくかった、松崎家(海の一家)と海の父・澤村雄一郎の船員仲間との人間関係相関図も載ってます。
そして年表。雄一郎たちが海軍に徴用されて出兵(おそらく3人の記念写真の後)から、雄一郎の死までの簡単な年表がついてます。
俊の戸籍上の父親が澤村で、最終的に風間家に引き取られた事情は、映画とこの年表を見ればだいたい理解できるでしょう。
- キーワード辞典(用語集)
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「コクリコ坂から」の物語に登場する用語が紹介されています。海のニックネームの「メル」の由来とか。戦争のこととか。
「ある程度の年齢の人ならこのくらいのことは説明されなくてもわかるかなー」というかんじですが、そうでない年齢の子供も見ていることを考えれば親切でいいですね。
別ページには昭和の風物についての説明もあります。
そして映画では説明不足だった設定の謎。たとえば「カルチェラタンでは女子学生も募集している(海たちが勧誘された)のに、どうして女子学生がいなかったのか? 」などについては、キーワード辞典以外のところでこまごまと説明されています。
あちこちのページに分散しているのでわかりにくいですが、ロマンアルバムを隅々まで読み尽くせば映画「コクリコ坂から」たいていの疑問には答えが出そうですよ。
- 宮崎吾朗監督イメージボード集(カラー3ページ)
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宮崎吾朗監督が描いたカルチェラタンやキャラクターや場面のイメージボード集3ページ。
キャラクターよりストーリーの場面の方が多いです。
絵コンテを見たときには、「おお! 『ゲド戦記』の絵コンテより絵がジブリ的になってる!! 」と思いましたが、イメージボードの頃はまだ宮崎吾朗さんの個性が強い絵ですね(笑)。
- 近藤勝也イメージボード集(カラー3ページ)
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「コクリコ坂から」のキャラクターデザインを担当した近藤勝也さんのイメージボード集3ページ。
ページの都合上、物語をイメージさせる絵よりキャラクターデザインのイメージボードが多いです。決定前の初期絵もわりと載ってます。
こういう絵をもっとたくさん見たい人は「ジ・アート・オブ コクリコ坂から」をおすすめします。
- キャラクター設定資料集(モノクロ線画)
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近藤勝也さんが描いたキャラクター設定画集(モノクロ線画)3ページ。
- 松崎海
- 風間俊
- 水沼史郎
- 松崎空
- 松崎陸
- 松崎良子
- 松崎花
- 風間明雄
- コクリコ荘の人々・身長対比図
- 北斗美樹
- 広小路幸子
- 牧村沙織
- カルチェラタンの住人たち
たった3ページではありますが、まあ設定画としてはこのくらいの量でもOKかと。
海のセーラー服設定画が多め。割烹着姿で走る海とか髪を下ろした寝間着の海とかいろいろ載ってます。
「ジ・アート」にはイメージボードはたくさん載っていますが、線画の設定画は載っていません。線画の設定画をまとめて見ることができるのは、このロマンアルバムくらいかと思います。
- 原画コレクション(モノクロ9ページ)
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レイアウトと原画集です。シーン(というかカット? )は以下の通り。
- みそ汁を作る海。原画5枚:賀川愛
- カルチェラタンから飛び降りる俊。原画5枚:藤田しげる
- 討論会の壇上での合唱。原画6枚・レイアウト1枚:米林宏昌
- 俊に告白する海。原画6枚・レイアウト1枚:上石恵美
- 俊と海をのせて波止場へ向かうオート三輪。原画5枚:山森英司
- 写真を見せながら語る良子。原画5枚:中村勝利
- 俊と海の自転車二人乗り。原画5枚:山下明彦
- 寝起きの海。レイアウト1枚・原画5枚:近藤勝也・廣田俊輔
- タラップに飛び乗る海を支える俊。レイアウト1枚・原画5枚:米林宏昌
- その他レイアウト6枚。小田野和由、田村篤、青山浩行、二木真希子、山田憲一、山形厚史
どれも線画ですが、原画ファン、レイアウトファンにはうれしい内容です。
- 背景美術集(カラー7ページ)
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「コクリコ坂から」の背景美術集。その絵を描いた美術担当者の名前も載ってます。
コクリコ荘、カルチェラタン、横浜、新橋…。「ジ・アート」本よりは少ないですが、ほどほどの量が載っているのでざっと見たい人にはいいんじゃないでしょうか。
カルチェラタンの内部図解や、物語に登場する横浜の地理関係は、別ページに載ってます。
- 宮崎駿イメージボード集(カラー2ページ)
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宮崎駿さんも今回は脚本担当ですが、一応イメージボードを描いてます。
「あの当時の情景」的なものが多いですね。
- スタッフインタビュー(モノクロ)
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メインのスタッフ・インタビューは以下の方々(敬称略)。
- 宮崎吾朗監督
- 鈴木敏夫(プロデューサー)
- 近藤勝也(キャラクターデザイン)
- 長澤まさみ(松崎海役)
- 手葵(主題歌)
- 武部聡志(音楽)
- 丹羽圭子(脚本)
- 佐山哲郎(原作者)
- 高橋千鶴(原作マンガ)
その他、アニメスタッフインタビューは各部署からもりだくさん。インタビュー内容もしっかりしてます。
作画監督3人、原画、動画検査、動画、色指定、色指定補佐、撮影監督、映像部、制作デスク、監督アシスタント、演出助手、音響、アフレコ演出、宣伝プロデューサーなどなど。1部署1ページほど。
監督アシスタントという聞きなれない肩書きが…(笑)。
丹羽圭子さんと佐山哲郎さんのインタビューは、「脚本 コクリコ坂から」の文章の方が内容濃いです。
宮崎吾朗監督のインタビューは、相変わらず「言いたいことはよくわかる」内容。毎度のごとく、出来上がった作品が「どうしてああなったのか? 」という理由が、インタビューによくあらわれてます。
「ゲド戦記」のときは、「言いたいことはよくわかるけど、それがどうしてああなったの!? 」と問い詰めたくなるかんじでしたが、「コクリコ坂から」には前回よりは吾朗さん色が出てるのかなと感じました。
60代後半(現在は70代に入ってますが)の宮崎駿さんの脚本を、30代後半~40代の監督にやらせようというのがそもそもの間違いかも。
それに「脚本 コクリコ坂から」の感想でも触れましたが、「天才・宮崎駿さんならうまく映像化できる脚本」を他の監督にやらせるのも無理があると思います。
ビジネス的な都合もあるのはわかるので、難しいのでしょうけどね。
キャラクターデザインの近藤勝也さんのインタビューにあるように、「宮崎吾朗監督の要望に100%答えるだけではダメで、会社には後2つ関所(宮崎駿さんと鈴木P)がある」という体制。
たしかに、キャラクターデザインの変遷をみれば、宮崎駿さんのアドバイスは確かに的確。宮崎吾朗監督はまだまだ経験不足が否めない状況。
最近のスタジオジブリはアニメの内容よりも、「これからどうなるの? 」という事が個人的に気になってます。
こんなかんじですね。最近のロマンアルバムはだいたい似たような構成なので、1冊持っていればだいたいどんなコンテンツが載っているかは想像がつくとは思います。
一つ難点を挙げるなら、「借りぐらしのアリエッティ」のロマンアルバムより500円も値上がりしている点。「ページ数は減ってるのに、何があったの? 」と言いたいところ。
とはいえフィルムストーリー、設定、世界観、キャラクター設定資料、原画集、背景美術、スタッフインタビュー。角川書店のガイドブックより内容が濃いし、アニメのガイドブックに必要なものがまんべんなくほどよくチョイスされています。
「コクリコ坂から」のガイドブックを1冊だけ買うなら、この「コクリコ坂から(ロマンアルバム)」がいいでしょう。
ライトファンから、コアなアニメファンまでカバーできる1冊だと思います。
- タイトル:コクリコ坂から(ロマンアルバム)
- ページ数:126
- 出版社・発売時期:徳間書店(2011-8-11)
- 総合評価:
内容紹介
- フィルムストーリー
- キャラクター紹介
- 用語集
- 宮崎吾朗監督イメージボード集
- 近藤勝也イメージボード集
- キャラクター設定資料集
- 原画・レイアウト集
- 背景美術集
- 宮崎駿イメージボード集
- スタッフインタビュー
- …etc.
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