「コクリコ坂から(スタジオジブリ絵コンテ全集18)」は、スタジオジブリのアニメ映画「コクリコ坂から」制作のための絵コンテを完全掲載した本です。

映画を見て、「脚本 コクリコ坂から」読了。というわけで、以前書いたこの感想文も大幅に修正しました。

宮崎吾朗監督の絵がジブリ風に!!

いきなり監督としての能力ともコンテの内容とも無関係な話ですみません(笑)。

宮崎吾朗アニメ初挑戦作の「ゲド戦記」の絵コンテは、山下明彦さんと共著。

吾朗監督の担当部分と、山下明彦さんの担当部分の絵コンテとの落差がかなり気になったものでした。

それに対して、今回の宮崎吾朗監督第2作「コクリコ坂から」絵コンテ。今度は最初から最後まで吾朗監督一人で絵コンテかいてます。

さらに絵! 「ゲド戦記」のときより、明らかにスタジオジブリ風味が増して、こなれてきてます。これは開いてみた瞬間に「おお、成長してる!?」と微笑んでしまいました。

いや、これすごいことですよ。監督もう40代ですよ? 10代~20代なら絵は描いていくうちにどんどん成長するし、絵柄も変わっていきます。

40代だと、もう絵柄が固定されてることが多いです。年齢的にしかたがない部分と、それでも変わろうとする意思みたいなものは絵から感じ取れましたよ。

真面目に取り組んでいる意欲は好感が持てます。まあ絵を描く能力=絵コンテを描く能力ではありませんが、「場面をイメージする力」「イメージを絵として描写する力」が前作の時よりアップしているということで。

絵コンテ見る限り、シロウト目には悪くない印象です「コクリコ坂から」。

スタジオジブリの過去作品の影響

「コクリコ坂から」では、過去のスタジオジブリ作品…いや、過去の宮崎駿監督作品を彷彿とさせる場面がいくつかあるのが気になります。

スタジオジブリの前作「借り暮らしのアリエッティ」。あれはスタジオジブリで長年アニメーターとして活躍してきた米林宏昌さんの初監督作品でした。「コクリコ坂から」同様、企画・脚本に宮崎駿さんが参加しています。

「借り暮らしのアリエッティ」は最近(2011年12月の金曜ロードショー(笑))で見たのですが、「借りぐらしのアリエッティ」の映像からはスタジオジブリの過去作品のデジャブのようなものはほとんど感じませんでした。

たとえ脚本が宮崎駿さんでも、キャラクター造形にいろいろ口を出していても、あれはやはり米林宏昌さんの演出作品です。

それに対して、絵コンテを見ただけで「過去のジブリで使われた表現やモチーフ」がチラホラする「コクリコ坂から」。宮崎吾朗さんはどこを目指しているのでしょうね。

演出で気になった点

映画を見たとき、演出面で気になったのは画面構成というかカメラワーク(?)。

討論会で、壇上のモブ学生が「古い物を壊すのは時代の趨勢である」と当時の時代背景を説明するセリフがありました。

この場面、ガヤガヤとヤジをとばす生徒達にカメラが向いていて、まるで壇上で語る人物の言葉に注意を払う必要がないような映像。

説明セリフの場合、ちゃんと言葉に集中できるような映像にしてもらわないとわかりにくいです。

上手い演出だと、そういうときは映像ではなくセリフに注意がいくようになってます。

どこにウェイトをおいて、何を目立たせるのか。そのへんにまだ気が回ってないような演出。

「リアルな演出」と言えば聞こえがいいけれど、計算されてないリアルなんていらないと思います。街頭カメラの映像じゃないんですから。

絵コンテを見たときには「そんなに悪くない」と思ったのは、文字と絵の両方から情報が入るせいですね。きっと字幕つきで見れば、問題なく理解できそう。

初見でも頭の回転が早い人には、この映画を「わるくない」と思えるのでしょう。私みたいな凡人には、初見時は途中で「?」をたくさん抱えたまま終わりました(笑)。

たしかにこの映画の醸しだす雰囲気は悪くありません。話を理解しようと思わなければいい映像に見えます。

だからキャラクターの会話を消して、音楽と映像だけ楽しむならいいかんじですよ。


以上。他にもいろいろあるけど、長くなるから割愛。

キャラクターに関しては、海はもう少し共感しやすい人物に描けなかったのかと。「ゲド戦記」のテルーもそうでしたが、今回もまた…。

学園の人気者から選ばれ、仲間に入り、恋に落ちる。何度か映画を見なおして、ようやくこの話の枠組みが少女マンガの王道であることに気付きました。

でもなぜかワクワクしない。海に自己投影するでもなく、二人の恋を応援したくなるかんじもしない。

個人的に共感できたのは、ラストの小野寺船長との対話シーンだけでした。私も年をとったものです(笑)。

ビジュアルは悪くないけれど、粗い設定に粗い話。そして演出のわかりにくいさ。

絵コンテ本で見たときより、情報量が増えているはずの完成映像の方がわかりにくく感じるのは、まだまだ発展途上という気がしました。

タイトル:スタジオジブリ絵コンテ全集18 コクリコ坂から
出版社・発売時期:徳間書店(2011-07-29)
ページ数:409
総合評価:3

内容紹介

  • 「コクリコ坂から」絵コンテ完全収録本

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