「MEAD GUNDAM―シド・ミード『ターンエーガンダム』モビルスーツ・デザイン画集」は「∀(ターンエー)ガンダム」本放送当時の本で、シド・ミードさんのラフデザイン集です。
サンライズの発注でシド・ミードさんがアニメ「∀(ターンエー)ガンダム」に登場する主要メカ(モビルスーツ)のデザインを担当したのはガンダム好きならみんな知ってる話ですね。
シド・ミードさんがデザインしたのは以下の7つのメカ。
- ∀(ターンエー)ガンダム
- スモー(SUMO)
- フラット(FLAT)
- モビル・リブ
- 4LEG(アニメ本編には未登場)
- バンデット(BANDIT)
- ターンXガンダム
この中で4LEGは本編に登場することはなかったですが、他の6つは本編で活躍しています。
「MEAD GUNDAM」にはデザイン決定までのたくさんのラフデザインが載っているので、初期ラフからどんなふうにデザインが変遷していったかを楽しめます。
本の内容はシド・ミードさんのラフ・デザイン(手書き英字メモもそのまま)、デザインメモに付けられていた説明(日本語訳)、日本側の指示、サンライズの設定担当・堀口滋さんがデザイン画分類のためにつけた細くメモなどで構成されてます。
シド・ミードさんはアメリカの工業デザイナー。
ガンダムのデザインに当たっては、まず過去のガンダムデザインを分析・考察。それを元に∀(ターンエー)ガンダムのコンセプト・スケッチや世界設定を理解しつつ、サンライズの提案を入れて、オリジナルアイディアを加味して再構成。
だいたいこんなかんじで進めていったらしいです。
この本を見ていて面白いなーと思ったのは、アメリカ人と日本人のロボット(デザイン)観の違いみたいなものでしょうか。
シド・ミードさんの「大河原邦男デザインの控えめな修正案デザイン」時点で「ちょっとマッチョ? 」と感じたデザイン。ミードさん曰く「今回提出するバージョンは少々ラディカル(ラディカル=ここでは過激な、急進的なの意味だと思われ…)」としたデザインでは「かなりマッチョ!!」。
「ガンダム」というデザインにさほどこだわりがない私でもそう感じるくらい。おそらくですが、アメリカ人的に強い=筋肉系マッチョなんじゃないかと。
当然のことながら富野由悠季総監督から出された修正指示メモでは「カルチャーショックを受けて思考が作動しませんでした」なんて言葉が(笑)。
日本人は「力ではなく技で勝つ」方が好きですが、アメリカ人はたぶん「力で勝つ」方が好意的に受け止められるんでしょうね。だから強いメカは見た目にも強そうなデザインになる…と。
「零戦の改造をお願いしたつもりだったのに、グラマン・ヘルキャット以上の爆撃機を提案されてしまった」という富野由悠季総監督の言葉は言いえて妙。ものすごく的確ですね。
でも「Mr.富野のリテイクは文学的」というシド・ミードさんの意見ももっともだと思います(笑)。
とにかく、ミードさんデザイン→それに対しての日本側(発注側)の修正指示…というように、デザインが決定するまでのやりとりも面白いです。
言葉の壁で行き違いがあったり、ターンエーガンダムの膝関節の自由度でもめたり。
「必要以上の可動範囲は兵器として無駄な追及で故障が増えるだけではないか」というシド・ミードさんの考え方はとっても工業デザイナー的で正しいですね。私もその考え方に一票!!
でもアニメですから。バンダイはガンプラ売らなくちゃいけないし、そうなると可動部分は多い方が…(笑)。
難点をあげるなら、ガンダムデザインのドキュメンタリーとして読むには指示とそのフィードバックの時系列がわかりにくいこと。
「それぞれの工程の絵を並べてあるだけ」というかんじなので、もうちょっと解説があればよかったと思うのですが。たとえばヒゲがあのヒゲ位置になったのはデザインの変遷でわかりますが、「なぜあのヒゲ位置なのか? 」の理由はイマイチわかりませんでした。
シド・ミードさんがいろいろとデザインのこだわりポイントや理由をあげているなかにも、明確に書かれてなかったような気がするんですが。読み込み不足かも?
ほとんどがモノクロページで、完成デザインのイラストだけがカラー。といってもシド・ミードさんのデザイン画なので、工業デザイン的カラー絵です。アニメ絵は全く載っていないので要注意。
完成デザインまでの工程にはかなりラフなデザイン画もあるし、決定稿は少ないです。アニメのメカ設定が見たい人は∀(ターンエー)ガンダム・アートワークスの方がいいでしょう。
デザインの過程を楽しみたい人ならこの「MEAD GUNDAM―シド・ミード『ターンエーガンダム』モビルスーツ・デザイン画集」を楽しく読めると思います。
- タイトル:MEAD GUNDAM―シド・ミード『ターンエーガンダム』モビルスーツ・デザイン画集
- 出版社・発売時期:講談社(2000-02)
- ページ数:319
- 総合評価:
内容紹介
- シド・ミードさんのターンエーガンダム・ラフデザイン集
ちなみにこちらが2013年1月に発売された復刻版。
中身は確認していないので、復刻前とどれほど違うのか、全く同じなのかは不明です。
上記復刻版リンク先で中身画像が紹介されてるので、気になる人は要チェック。
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