宮崎駿の雑想ノート 感想

映画「紅の豚」原作の「飛行艇時代」は別に発売されていますが、模型に興味がない人ならこの「宮崎駿の雑想ノート(増補改訂版)」の方がいいかと思います。

雑誌「モデルグラフィックス」に連載された宮崎駿さんの、戦争モノ・オールカラー13編。舞台は第一次大戦から第二次大戦。最初の方は絵と文章だったのが、次第にコマ割までした漫画へ。

ストーリーはフィクションとノンフィクションあり。雑想ノートは2冊発売されてますが、後で発売された「増補改訂版」がおススメ。理由は「増補改訂版」にはどの話が実話でどの話が宮崎駿さんの妄想もとい雑想なのか、巻末に解説がついているからです。正直それを読まないとどっちがどっちだかわかりません…。

それは決して宮崎駿さんの卓越した設定&ストーリー構成力…ではなくて、私が現代史に弱い世代だからだと思います。

とにかく、巻末の解説には宮崎駿さんのちょっとした談話も載っているので、個人的に増補改訂版がおススメ。

知識不足もありますが、平和ボケしている頭には、この本に描かれている実話と作り話の区別がつきません。カッコいい(?)戦車や飛行機、戦艦は登場しますが、それを使っている人間のドタバタ劇はバカバカしさあふれてます。

実話が混じっているあたりやるせないですが、冷静に見ると「この人たち、なんでこんなことやってるの? 」というむなしさすら感じます。

宮崎駿さんは別の本「宮崎駿の妄想ノート 泥まみれの虎」でこんなことを言っています。以下「泥まみれの虎」81ページ5コマ目から。

戦車が強そうとかカッコイイから好きなんてのはな ただの無知のせいだ(中略) 戦争も軍隊の愚劣さ 民族の幼児性 歴史の残酷さ 人間の悲劇と喜劇 そのすべての…結晶なのだ!!

そもそもこういう姿勢なので、スカッと爽快な戦争エンターテイメントじゃありません。

宮崎駿さんの手描き水彩絵柄と空想&実在メカを楽しみつつも、戦争がもたらす悲喜劇をかんじとるストーリー集ですね。そのジャンルに全然興味がないという人にムリにおススメはしませんが、絵柄はさすがでとっつきやすいのですんなり読めますよ。

宮崎駿の雑想ノート(増補改訂版)
  • 出版社・発売時期:大日本絵画(1997-07)
  • ページ数:128
  • 好感度:(4)
  • 宮崎駿さんの戦争モノ・ストーリー漫画集