THE ART OF KIKI'S DELIVERY SERVICE 感想
「魔女の宅急便」はプロデューサー・脚本・監督宮崎駿作品。「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」のジ・アート同様てっきり宮崎駿監督のイメージボード満載…だと思いこんでいました。 ところがびっくり、宮崎駿監督の絵はこの「THE ART OF KIKI’S DELIVERY SERVICE」にはほとんどありません。
最初は宮崎駿監督がやる予定じゃなかったらしいです。そのいきさつもこの本にしっかり書かれています。意外でした。
というわけで、この本に載っている手描き系の絵で多いのは、キャラクターデザインを担当した近藤勝也さんの絵と美術ボードを担当した大野広司さんの絵。 初期イメージボードは近藤勝也さん(「海がきこえる」「雲のように風のように」)、大塚伸治さん(「平成狸合戦ぽんぽこ」)、近藤喜文さん(「赤毛のアン」「名探偵ホームズ」)の競演。宮崎駿さんの絵はキャラクターラフ設定などが少々。
このイメージボード集がすごくイイ! 名前付なので誰の絵かもわかります。同じジブリ絵でもタッチの違い。近藤喜文さんはやや素朴。近藤勝也さんはやや都会的というかシャープ。大塚伸治さんも独特ですね。描かれているイメージもそれぞれで魅力的です。
掲載されているキャラクター設定資料集はクリーンナップされたモノクロ線画ではなく、鉛筆画を水彩で着色したカラーキャラクターイラスト風のもの。 メインキャラクターからサブキャラクターの初期案から決定稿までの絵を見ることができます。初期案キキの髪型はロングヘアー、後ろで三つ編み、二つ分けといろいろ。ショートでリボンに決まるまでの絵が面白いです。
顔立ちがずいぶん変遷したキャラクターもありますね。服装などのコスチュームも実際に使われなかったものまで載っています。キキの水玉パジャマとか水着姿とか。
キャラクターの性格や心情などの解説を宮崎駿監督が、絵に関しては近藤勝也さんがコメントしていますよ。
美術ボードにも大野広司さんのコメント付。
巻末のシナリオはモノクロページですが、文章の横に本編画像つき。フィルムストーリーを見るような感覚で読めるので便利ですよ。
近藤勝也さんのイメージボードとキャラクター設定イラストの量はかなりあるので、ファンは必見!! 意外と近藤喜文さんのイメージボードも多いので、近藤喜文さん好きも要チェック!
なお、キャラクター線画は「ロマンアルバム 魔女の宅急便」でみることができますよ。
ロマンアルバムと比べると、スタッフインタビューなどの読み物は少ないですが、絵に関するコメントはこの本の方が多いかな。
ロマンアルバムよりイメージボード、美術ボード、初期キャラクター案がはるかに充実しているので、絵をしっかり楽しみたい人はこの本がいいですよ。
- 出版社・発売時期:徳間書店(1989/11)
- 好感度:(5)
- アニメ「魔女の宅急便」のメイキングアートブック
- 魔女の宅急便の初期イメージボード、美術ボード
- キャラクター設定
- 本編フィルム、セル
- アニメーション技法解説
- 魔女の宅急便シナリオ採録