原作を読んだのがずいぶん前だったので、アニメ序盤はあまりアニメ「精霊の守り人」に違和感を感じてなかった私。あらためて原作を読み直すと、結構違和感が…。アニメも中盤に入るとオリジナルストーリーが増えてくるので、けっこう違ってきています。

とりあえず、アニメと原作の違いの主なものをカンタンにまとめてみました。

  • アニメ:季節は春から春分まで         原作:季節は秋から夏至
  • アニメ:カシヅキという職がある(シュガ)   原作:なし(シュガは星読みエリートの1人)
  • アニメ:バルサの「誓い」でチャグムが8人目   原作:もう足し算も引き算もできない状況…
  • アニメ:決戦兵器・大松明がある        原作:大きな松明を自作
  • アニメ:物語半ばでサグム逝去         原作:物語終盤でサグム逝去
  • アニメ:精霊の守り熊登場           原作:サグには1つの卵(チャグムの卵)のみ
  • アニメ:水の精霊は自力出産不可        原作:自力出産可能
  • アニメ:ラルンガと水の精霊は共生関係     原作:食うか食われるか
  • アニメ:ラルンガの目的は卵ではなく守り人   原作:目的は卵
  • アニメ:時々横文字単語が…           原作:そんなものはなし
  • アニメ:中盤水車小屋生活             原作:タンダハウス→狩穴へ
  • アニメ:シュガは狩人たちと遠征          原作:最後までインドア(一切お出かけなし)

こうしてみるとかなり変更されています。季節やカシヅキの職の追加、大松明、サグム逝去の時期あたりはアニメの「わかりやすさ」や「見栄え」重視での改変なので、別に違和感はないです。

アニメ中盤の水車小屋生活も、全26話にしてキャラクターの魅力をふくらませるエピソード追加としての変更。これもまあアリかな。でも「命大事に」で外界からヒッキー生活だった原作と比べて、「(アニメは)余裕あるじゃーん」と思うところはあるけれど。

違和感があるのは、バルサの「8人目コンプリート」とか、ラルンガと雲の精霊の卵、精霊の守り人がらみの変更ですね。

争いのさなかにある人をたすけるには、べつの人を傷つけなければならない。(中略)もう、足し算も引き算もできなくなっちまった。……いまは、ただ、生きてるだけさ。

上原菜穂子『精霊の守り人』

アニメのちゃくちゃくと順調に(?)「誓い」を果たせてるバルサと、誰かを助けることで別の恨みを買う現実の難しさに迷う原作バルサ。この違いはけっこう大きいです。

原作バルサの方が、現実的かつ人間的で共感できるんですが…。これもアニメ的なわかりやすさというか達成感優先かな。

でも、こういう「キレイごとじゃない」ところが原作「精霊の守り人」の魅力なんですよ。チャグムを救うことによって、バルサは自分を守って亡くなったジグロの気持ちを体験する。それによって、人生に行き詰まりを感じていたバルサが救われる。大人の方がこういう感覚は共感しやすいでしょうね。

ところで、どうもナットクしづらいのがラルンガと精霊の卵と守り人の関係の改変。

アニメでは、精霊の卵が自然な形でチャグムの体内から出てくることが「できない」ことになってます。

つまり、ラルンガが守り人を食べる→卵は吐き出す(食べない)→ナージがキャッチして運ぶ、これがアニメでのルール。だから「守り人は食べられる」のが必要なプロセスになってます。

卵がかえらないと干ばつで困るとはいえ、守り人にメリットなし。選ばれた守り人が迷惑なだけ。だからチャグムが「どうして卵を守りたい」と、終盤あがく気持ちがイマイチわかりにくいような。

この改変はチャグムの出産、バルサ、タンダの介添えシーンがやりたかっただけじゃないかと。

ストーリーは地味ですが、話のスッキリ感と、登場人物の感情描写のリアル感は原作の方がいいと思いましたよ。アニメに比べると原作は見せ場が少ないというか、地味というのはありますけどね。児童文学としては充分なエピソード量だと思います。

大人にはこのくらい地味な方がより現実的に感じますが、子供にはアニメの方がとっつきやすいかもしれませんね。

あと、リストには挙げませんでしたが、王宮関係の人々の描写はかなり違うかな。シュガ、ガカイ、狩人たち…。ガカイさまはアニメの方がおいしい役になってます。原作シュガの役割を一部分担しているので。

ちなみに狩人ですが、原作「精霊の守り人」に名前がでてくるのはモン、ジン、ゼン、ユン、タガ、スンの6人。セリフや描写があるのはモン、ジン、ゼン、ユンの4人。タガ、スンはモンのセリフの中に登場するのみです。

アニメのエピソード追加に関しては、原作の続編シリーズからいくつか持ってきて使ってますね。

原作本は今、最初に発売された偕成社ワンダーランド版、軽装版、新潮文庫版の3冊が発売されています。

偕成社ワンダーランド版、軽装版は挿絵つき(軽装版は未確認なので違っていたらすみません)。挿絵はスタジオジブリのアニメで原画を担当している二木真希子さん。ジブリ風アニメ絵じゃないし、アニメ「精霊の守り人」の絵ともかなり雰囲気が違います。アニメの服装はやっぱりアニメオリジナルですね。

値段は新潮文庫版が一番手頃だし、ひらがなを漢字にして大人にも読みやすくなっているので、文庫版おススメかも。

アニメ精霊の守り人関連記事

  1. 精霊の守り人 オフィシャル・ガイド
  2. 精霊の守り人 設定資料集 第壱集(movic)
  3. 精霊の守り人 設定資料集 第弐集(movic)
  4. 精霊の守り人 スタッフ・声優・主題歌・全話タイトル

精霊の守り人原作関連記事

  1. 精霊の守り人の原作本の感想、アニメとの違いなど