「赤毛のアン」の背景美術を担当していた井岡雅宏さんの画集です。世界名作劇場の絵が中心ですが、なかでも「赤毛のアン」の絵(美術ボード・本編背景)の分量が一番多いです。
画集+関係者のインタビューなどで構成されています。
ただ、あんまり残っていないみたいなんですね、絵が。「とにかく絵がたくさん見たい!」という人には物足りないかもしれません。
私はハイジの美術が好きなので、もうちょっと見たかったかな。
当時のアニメ美術事情は、ジブリの高畑勲さんや宮崎駿さんが寄せている文章からよくわかります。現在ほど緻密じゃありません。
あの頃の他のアニメ美術がもっと単純だったのを思えば、キャラクターデザインとのバランスから考えても充分な絵だったと思います。子供の目にも魅力的でした。
一押しポイントはモノクロの美術設定集。「あらいぐまラスカル」「ふしぎな島のフローネ」「アルプス物語・わたしのアンネット」。
世界名作劇場を作った日本アニメーションの美術設定は、すごく細かいんですよ。ニュータイプ・イラストレイテッド・コレクションの「赤毛のアン」「母をたずねて三千里」「若草物語ナンとジョー先生」などで見た人は知ってますよね。
この画集ではラスカル、フローネ、アンネットの美術線画を見ることができます。
ラスカルではスターリングの家(外観・室内)・友人のオスカーの家・学校・街並みなど。アンネットではアンネットの家(室内)や山小屋、牧場など。
フローネでは、フローネのスイスの家やベルンの街並みから始まって、ライン河の風景、オーストラリアに向かう船「ブラックバーンロック号」の外観・船内、漂着した南の島、そしてメルボルンの家まで。かなりの絵が載ってます。フローネだけは別に着彩美術のページもあります。
ちなみに「メルボルン?『南の虹のルーシー』では?」と「ふしぎな島のフローネ」の移動経路を忘れた人のために簡単に説明すると、フローネと家族はスイスのベルン出発、イギリスのリバプールから船でオーストラリアを目指す途中に漂流して南の島で生活。脱出してオーストラリアのメルボルンへ、と旅しています。
街並みの線画もいいですが、各家の室内の小物などもしっかり設定されていて興味深いですよ。
キャラクターの設定画も載っていればもっとよかったのですが、それは井岡雅宏さんのお仕事ではないので仕方がないです。
ラスカル、フローネ、アンネットに関しては、美術設定がしっかり載っているファンブックはなかったと思います(同人誌にはあったかも?)。美術線画だけでも見る価値あり!
- タイトル:井岡雅宏画集―「赤毛のアン」や「ハイジ」のいた風景 (ジブリTHE ARTシリーズ)
- 出版社・発売時期:徳間書店(2001-04)
- ページ数:103
- 総合評価:
内容紹介
- 井岡雅宏さんのアニメ背景美術画集
- 赤毛のアン(美術ボード、本編背景)
- アルプスの少女ハイジ(背景)
- 太陽の王子ホルス、みつばちマーヤの冒険、草原の少女ローラ(フィルム)
- ふしぎな島のフローネ(美術ボード、着彩美術設定)
- アルプス物語・私のアンネット(美術ボード)
- あらいぐまラスカル、ふしぎな島のフローネ、私のアンネット(モノクロ美術設定)
- インタビュー(土田勇、阿部泰三郎、保田道世、松土隆二)
- 「わたしの知る井岡さんの画業」高畑勲、「心残り」宮崎駿
- 井岡雅宏フィルモグラフィー
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