百瀬義行さんといえば、1970年代からアニメーターとしてお仕事されていて、日本アニメーション時代を経て、スタジオジブリのお仕事あたりが有名。
最近(2011年現在)だと、レベルファイブのゲームの「二の国 漆黒の魔導師」のアニメーションパートの監督あたりのお仕事が有名かな。
この本「百瀬義行スタジオジブリワークス」は、百瀬義行さんが関わったアニメ作品の設定資料、原画、絵コンテ、レイアウトなどのメイキング資料集を中心にまとめた本です。
本のサイズはB5。A4ほど大きくはないけれど、絵が小さくて見づらいわけでもないので手ごろな印象です。
ページ数は200ページ近くあるので、このくらい厚みがあるのはうれしいかな。
解説もそこそこついてます。分量的には少なくもなし、多くもなしといったところ。まあほどほどに読むところアリということで。
「スタジオジブリワークス」といいつつも、スタジオジブリ以前の作品も扱ってますよ。
ではいつものように内容紹介と感想。
- 「百瀬義行スタジオジブリワークス」の掲載作品
この本に掲載されている作品はだいたい以下の通り。
- 天才バカボン、ど根性ガエル、はじめ人間ギャートルズ
- アラビアンナイト シンドバッドの冒険、ペリーヌ物語、トム・ソーヤーの冒険
- まえがみ太郎、トンデモネズミ大活躍(キャラクター設定資料各2、3ページ)
- 紅の豚(原画集4ページ)
- 耳をすませば(原画集4ページ)
- ゲド戦記(レイアウト集4ページ)
- 火垂るの墓(14ページ、イメージボード、絵コンテ)
- おもひでぽろぽろ
- 平成狸合戦ぽんぽこ
- ホーホケキョ となりの山田くん
- ギブリーズ episode2
- 新垣結衣「piece」PV
- ハウス食品「おうちで食べよう。」のCF
- Capsul PV(ポータブル空港、special station No.9、空飛ぶ都市計画)
- 二の国(24ページ)
- その他イラスト仕事
- 描き下ろしビジュアルストーリー「ニルヴァーナの夜」18ページ
作品の時系列順にまとめるとこんなかんじですね。実際は「二の国」が巻頭にきてますけどね。
- 二の国 漆黒の魔導師
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「二の国 漆黒の魔導師」は、この本が発売された時点では百瀬さんの最新のお仕事ということで、24ページをさいてます。
レベルファイブのキャラクター原案・イメージボード、そして作画監督の賀川愛さんのキャラクターデザイン2ページに、色彩設計2ページ。
アニメパートの絵コンテ(カラー)が6ページ。その他レイアウト、原画、動画、背景美術、CGなどなど。
百瀬さんのカラーの絵コンテが16枚かな、けっこう載ってます。
ニンテンドーDSゲームだから「二の国 漆黒の魔導師」はほとんど知らないのですが、かなりジブリ的な絵作りになってますね。
解説を読むと、シナリオは決まっていたものの、感情表現やセリフ等の細部に関しては比較的自由度があったようです。
そういう意味では、絵だけではなく雰囲気もジブリ風味というか百瀬さん風味が感じられる作品だったのかもしれませんね。
- アニメーター時代の原画・キャラクターデザイン集
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「天才バカボン」~「トンデモネズミ大活躍」までは、ほぼモノクロの原画。全部あわせて約9ページ。絵の大きさはまちまち。
「はじめ人間ギャートルズ」等の「東京ムービー作品」や「アラビアンナイト シンドバッドの冒険」等の「日本アニメーション作品」がかなり懐かしいです。
「まえがみ太郎」「トンデモネズミ大活躍」は、キャラクター設定資料集(モノクロ)。両方あわせて約5ページ。
「トンデモネズミ大活躍」はもりやすじ(森康二)さんの絵というイメージが強かったのですが、「もりやすじさんからキャラクターデザインを引き継いで」との事なのでキャラクター設定資料が載ってます。
うーん、どう見てももりやすじ絵という感じですけどね。百瀬さんのデザインはあるのかな? 人物はともかくとして、トンデモネズミをはじめ、動物はものすごくもりやすじさんの絵に見えますが…。
「ペリーヌ」は原画2枚、「トム・ソーヤー」は番宣用パンフレットのイラスト(セル塗りカラー絵)のみ。量が少ないので、名作劇場ファンがそのためだけに買うのはおススメしません。
まあペリーヌの原画2枚のうち1枚は、30話あたりのシミーズを自作する話のときの下着姿…だと思います(もう30話がうろおぼえ(笑))。が、その絵のためだけにこの本を買う紳士(笑)もおられますまい。
- スタジオジブリ時代の原画・レイアウト
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スタジオジブリ時代からは、「紅の豚」「耳をすませば」の原画、「ゲド戦記」のレイアウト。そして主に高畑勲監督との「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」「平成狸合戦ぽんぽこ」「ホーホケキョ となりの山田くん」「ギブリーズ episode2」などのイメージボードや絵コンテ集。
高畑勲監督は絵を描く人ではないので、絵コンテも百瀬さんが描いてます。
高畑勲がシナリオに線を引いてカット割りして、大まかな構図も指示したらしいです。でも文章やラフがあるとはいえ「他人のイメージ」を元にここまで詳細な絵コンテをおこすのはなかなか難しそうですね。
このクオリティでそういうことができるのは、やはり腕のいいアニメーターさんならではだと思います。
「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」はアニメだけど画面のリアリティにこだわったつくりになっているので、レイアウトやカットへのこだわりがすごい!!
特に「おもひでぽろぽろ」は写実的表現を追及するために、それ用の検証レイアウトなども作られたという事で、そんなものも載ってます。
絵コンテもけっこう載ってますが、絵コンテだけ詳しく見たい人はスタジオジブリの絵コンテ全集の方がいいかと思いますよ。
ちなみに「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」などはジブリの「ジ・アート本」が出てたと思います。そちらは未見ですが、たぶんイメージボードもそちらの方が詳しいのではないかと。
とはいえ、古い「ジ・アート本」(特に高畑勲さんのは)はあまり見かけないし、この本にもイメージボードはそこそこ載ってます。
「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」「平成狸合戦ぽんぽこ」のイメージボードは
- 火垂るの墓:24枚
- おもひでぽろぽろ:12枚
- 平成狸合戦ぽんぽこ:約30枚
もちろんどれもカラー絵。
特別深く思い入れのある作品がないなら、スタジオジブリの複数の高畑作品まとめてイメージボードが見られるこの本という選択もアリかなあと思います。
- スタジオジブリSF三部作ほか
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後半はデジタル系のアニメ作品のメイキング資料集。
ハウス食品の「おうちで食べよう」CMのイメージボード、CGワーク。「Capsul PV(ポータブル空港、special station No.9、空飛ぶ都市計画…いわゆる「SF三部作」です)」の絵コンテやキャラクターデザイン集など。
あまり他では目にしないメイキング資料が載ってます。
「おうちで食べよう」CMの夏バージョンの宮崎駿さんのイメージボードはどこかで出てたような気もするけど。ちなみにCMの絵コンテも1枚載ってますが、CMの絵コンテにしては描きこまれすぎ(笑)!!
余談ですが、ハウス食品「おうちで食べよう。」や「Capsul PV」の映像は、「ジブリがいっぱいSPECIAL ショートショート」に収録されていますよ。
- その他作品集、描き下ろしストーリー「ニルヴァーナの夜」
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それからイラストレーター仕事の「おもひでぎょうじ」を映像化するという話があったらしくて、カラーの絵コンテが12枚載ってます。
結局お蔵入りになったようなので、幻の絵コンテ。ほのぼのとした内容になっているので、興味のある人は是非。
描き下ろしの「ニルヴァーナの夜」はカラー絵本のようなイラストストーリー。アシモフの短編小説「夜来たる」に触発されたストーリーということですが、私は「夜来たる」を読んだ事がないのでどこらへんがそうなのかは不明です。
服装は中世風、話はSF風といった印象でしたよ。
- インタビュー、コラムなどの文章
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文章はコラムが3つ。高畑勲監督2ページ、百瀬義行さんインタビュー(今後の目標など)2ページ、百瀬義行さん×中田ヤスタカ(SF三部作音楽担当)対談など。
だいたいこんなかんじですね。
「二ノ国」に関しては、他にどんな本がでているのか知らないのでちょっとコメントしづらいですが、24ページあるのでけっこう載ってますよ。キャラクター設定とカラーの絵コンテはおススメ!
見た感じの印象は、ビジュアル資料中心。ほどよく解説がついてるので、アニメのメイキング資料に興味がある人なら楽しめると思います。
ビジュアル資料が充実しているので、「スタジオジブリの高畑勲監督作品が好き!」「昔の日本アニメーション、東映ムービー作品好き!」という人にはいいかと思いますよ。
- タイトル:百瀬義行 スタジオジブリワークス
- 出版社・発売時期:一迅社(2011-07-15)
- ページ数:171
- 総合評価:
内容紹介
- アニメーター百瀬義行さんのアート・ワークス本
- 二の国(24ページ)
- 天才バカボン、ど根性ガエル、はじめ人間ギャートルズ
- アラビアンナイト シンドバッドの冒険、ペリーヌ物語、トム・ソーヤーの冒険
- まえがみ太郎、トンデモネズミ大活躍(キャラクター設定資料各2、3ページ)
- 紅の豚(原画集4ページ)
- 耳をすませば(原画集4ページ)
- ゲド戦記(レイアウト集4ページ)
- 火垂るの墓(14ページ、イメージボード、絵コンテ)
- おもひでぽろぽろ
- 平成狸合戦ぽんぽこ
- ホーホケキョ となりの山田くん
- ギブリーズ episode2
- 新垣結衣「piece」PV
- ハウス食品「おうちで食べよう。」のCF
- Capsul PV(ポータブル空港、special station No.9、空飛ぶ都市計画)
- その他イラスト仕事
- 描き下ろしビジュアルストーリー「ニルヴァーナの夜」18ページ
- …etc.