「君たちはどう生きるか」の主題と推す理由
宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」を映画館で見てきたのでストーリーの感想です。8月11日に劇場パンフレット発売。今は10日の夜。もう言いたい放題書けるのは今日しかない(こともないけど(笑))ので書きます。
「君たちはどう生きるか」を推す理由
「君たちはどう生きるか」いいじゃないですか!劇場まで足を運んだ甲斐がありました。宮崎駿監督ありがとう!!
あからさまに子供向けの「崖の上のポニョ」では「幼稚園児にそんな重い選択させて責任とか背負わせるのどうなの(笑)?」「いや、幼稚園児そんなに深く考えて答えてないし、成長したら答えは変わると思うわー」とかイマイチ話に乗れなかった大人ですが、「君たちはどう生きるか」は「ポニョ」と「コクリコ坂から(宮崎駿さんは脚本担当)」の話のひっかかる部分を修正してきた感があってよかったです。子供向けだけど、これは大人もいけますよ。
いつもの宮崎駿監督なら随所に入れてくるコミカルな笑いのシーンが今回はかなり少ないです。さらに主人公の眞人(マヒト)が笑わない。文学作品みたいなノリになってます。なんだか真面目な作りになってる気がします。
なんか、ゲド戦記に似てると言ってた人がいたんですよ。たしかにゲド戦記も宮崎吾朗監督の処女作で、出来の好き嫌いはともかくとしてすごく真面目に作ってる印象はあったんですよねー。言われてみると映像が醸し出す真面目な雰囲気みたいなものは似てると感じました。芝居の上手さは「君たちはどう生きるか」に軍配が上がりますけどね。何か制作体制に変化があったのでしょうか?
「君たちはどう生きるか」の雰囲気を説明するなら「宮崎駿監督版の『銀河鉄道の夜』」みたいな印象です。監督の死生観みたいなのが出てるとことか、全体的に死の臭いというか暗いムードが漂ってるとことか。
でもわかりやすく泣かせる感動作にはしなかったから、見た人の反応がイマイチなのではと思います。笑いが減って、涙もないわけだから。
それでも嫌な人間が一人も出てこないのはいつもどおりの宮崎駿監督ドラマ。見ていて不快感がないのがいいです。
たしかによく理解できないモチーフもあります。ワラワラとか影のような人とか「ワレヲ学ブ者ハ死ス」と書かれたお墓とか。他にもいっぱいあるけど、それわからなくても、物語の本筋は理解できますよ。人間ドラマだけみてても魅力的。小難しい考察とかやりたくなければしなくても、ストーリーだけで楽しめました。
ラスト、私はいい終わり方だと思いました。母親の死を子供なりに受け入れて、しっかり前を向いて進む覚悟を決めたわけだから。ボロボロ泣かせるより、このくらいカラッとしてるのもいいと思うわけです。そのへんは好みの問題かな。
「君たちはどう生きるか」のテーマで推したい
「君たちはどう生きるか」の主題は、「自分にとって好意的に見る事ができない異質な他者とどう向き合うのか」かなと思っています。
母を亡くした主人公の小学生(ですよね?)・眞人の上の世界(現実世界)の人間関係はこんなかんじ。
- アオサギ:中身はオジサン。勝手に眞人の部屋に入ってきたことで眞人激怒。眞人と交戦。敵対関係。
- 転校先のクラスメイト達:金持ちのボンボンの眞人とは違う、坊主頭の日焼けした少年たち。転校初日に眞人とケンカ
- キリコ:眞人の家の婆やの一人。タバコをくすねたり、子供に取引を持ちかける曲者。眞人は心を許していない
- 夏子:父の後妻。父の子を身ごもっている。眞人の叔母でやさしい女性だが、眞人は心を許せない
- 眞人の父:妻を亡くしてほどなく夏子と再婚。眞人は父の再婚を母への裏切りのように感じている
アオサギとクラスメイトは家族ではない。キリコは住み込みの婆やだから、家族ではないけれど家族に近い。夏子と眞人の父は家族。どの距離感の人とも上手くつきあえていない眞人ですが、他の人たちが眞人を嫌っているというわけではありません。
アオサギは眞人が木刀で襲い掛かってきたから交戦して、敵対関係になりました。先に手を出したのは眞人ですね。クラスメイトは先に手を出したのはどちらでしたっけ。挑発したのはクラスメイトだったと思いましたが。父親、夏子、キリコも眞人の方が一方的に距離を置いて心を開いていないだけ。
下の世界(塔の中の幻想世界)でキリコに助けてもらったのを皮きりに、夏子を助けるためにアオサギと手を組む必要にせまられます。仕方なしにアオサギの話に耳を傾け、受け入れられる要求は受け入れて共に行動。そうするうちに、アオサギの態度も変わってきます。
何もせずに関係性が変わったわけではなく、眞人の態度や行動が変わったからアオサギの態度も行動も変わる。人間関係は合わせ鏡ですね。
敵対関係から始まり友達として別れる。
いいじゃないですか。友達として別れるってとこが特にイイ!もう会う事もない、これからの事を気にして相手に気を遣う必要などない。それでも変わらない信頼。私はこういうの大好きです。