「つり球 SF -Short Films-」はアニメ「つり球」の内容そのままノベライズ（小説化）…ではなくて、短編集です。

後日談とか、何話と何話の間にこんな感じのエピソードがあってもいいよね! 的な内容。

作者の櫂末高彰さんも、アニメのシリーズ構成とかシナリオ担当者ではないですね。

この本を読むと、そういう意味では良くも悪くも公式二次創作小説という印象を受けました。

アニメスタッフ担当ではない挿絵イラスト等が、さらにそういうイメージを加速させてるのかもしれません。

もちろんキャラクターのセリフ回しなどは「ああ、こういう感じの事をいいそう」だと思ったし、その手の違和感はなかったです。

難点を挙げるなら、ちょっとノリ（状況設定も含む）が二次創作くさい。なんというか、微妙にBL風味?

私がそっち方面をやや過敏に疑いすぎか!? という気もするのですが、気になる人は気になるかもしれません。

アニメ「つり球」が健全だっただけに、余計に気になるだけかも。

それから、表紙イラストはアニメの衣装デザインも担当している冨田収子さんの描き下ろし。ハル以外はちびキャラですが、これもアニメのイメージとのブレはなし。

けれど、中の折りたたみカラーイラストと挿絵イラストは、ライトノベル等で活躍中のイラストレーター担当。

ちなみに「つり球 SF -Short Films-」折りたたみ&挿絵イラスト担当者リスト（敬称略）。

  • TNSK
  • カラクリシオン
  • ヨネ助
  • 庭

私、この手のイラストは嫌いではないんですけどね。二次創作絵嫌いの人には微妙かも。

それでは「つり球 SF -Short Films-」収録の5つの短編の感想。

禁断のストアルーム

ユキとハルが、うっかり物置に閉じ込められて…という話。

なんとか釣りを絡めようとしてきたのはいいんですけど、物置発見から閉じ込められるまでのシチュエーションが強引で。

描写のせいか、その後の話に繋げるためとはいえ鍵がかかった理由が不明で「大雑把な話だなあ」と。

とまどってエグザミネーション

ハルがテストを数学の小テストを白紙提出。

すでに中間テストを全教科白紙提出した実績があるため、期末テストで赤点を取ったら夏休みは補習。

その場合、巻き添えでユキと夏樹も補修を言い渡されることに。そんなこのになれば、夏休みに釣りができなくなる!?

ハルのテスト勉強のために、夏樹がユキの家にお泊り。

これまたよく二次元でありそうなネタ。

余計な萌えシチュ挟まなくても、そのへんは読者が勝手に妄想する余地として残してもいいと思うんですよ。

怖がってナイトウォーキング

ユキ、ハル、夏樹で夜中の学校探検（というかきもだめし?）。

アキラの「お仕事」を上手く絡めてきたとは思うのですが…。

胸張ってウェディング

歩ちゃんのプロポーズ話。これが唯一アニメの後日談風味の話になってます。

あの歩ちゃんが、なぜ長年の蜜月（といえるか?）関係を終わらせて、いかにして海咲さんにプロポーズしたか。

アメリカに出発するまでに、世話になった船長と海咲さんをまとめていきたい。結婚式出席までは無理でも、せめて婚約までは…と奮闘（?）する夏樹。

まあそこらへんが見どころでしょうか。出番が多いのはユキですが。

旅立つ夏樹を空港まで見送るシーンもあるので、気になる人は読んでみては。

ハルとタカとクロ

ハルがメインの話。

微妙にページ数があまったので入れました。という感じがしなくもない短さ。

しかし短い話っていうのは、上手くまとめるのが異様に難しいですよ。ライトノベルはただでさえ密度を上げられないし。

悪くはないけど、中途半端な感がありました。

以上。

どの話もメリハリ不足気味。なんとなくシチュエーションを積み重ねて、なんとなく終了。

アニメも日常話は派手なシチュエーションこそありませんでしたが、心理的なヤマや「ここがこの回の話の見どころ! 」という要点はあったのに。

アニメの絵や音楽や動き、演出に頼れないという不利はあるから仕方ないのかな。

そのへんは「アニメ本編話とは異なるノベライズ」に求めすぎの要素なのかもしれないですね。

「つり球」のどこに魅力を感じていたかによって、この本の印象も違うと思います。

話の内容に期待しすぎずに、シチュエーションを楽しむタイプだと楽しめるのではないでしょうか?

タイトル：つり球 SF -Short Films-
出版社・発売時期：エンターブレイン（2012-07）
ページ数：255
総合評価：3

内容紹介

  • 「つり球」短編集5本
  • 禁断のストアルーム
  • とまどってエグザミネーション
  • 怖がってナイトウォーキング
  • 胸張ってウェディング
  • ハルとタカとクロ
  • あとがき

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