押井守さんがアニメ化すると聞いて、「よーし、オバサン原作読んじゃうぞ!」と読み始めた森博嗣「スカイ・クロラ」。
NHKの「アニメ監督・押井守のメッセージ ~新作密着ドキュメント~」では、「若者に希望を」みたいに言ってたよね…!?と思わず、原作を読んでからもう一度ビデオを見直すくらい「希望」とは程遠いイメージの原作でした。
NHKのドキュメントを見たときは、まだ原作を読んでなかったから「ふーん」くらいで内容がしっかり頭にはいってなかったんですよ…。
バラエティ番組「スッキリ!」内で流してたコラボ企画の1分アニメ「スッキリ・クロラ」がギャグだったから、「いまどきの若者の戦場ライフみたいなかんじかなー?」と想像してたのが間違いでした。うーん、だまされた!?
森博嗣さんの「スカイ・クロラ」はかなり淡々としていて、中盤まではドラマ的な山場もない話なんですよ。「エリア88」みたいなのを想像してると、肩透かしをくらいます。死を前にした熱い人間ドラマじゃないのね。
主人公カンナミ・ユーヒチは爆撃機乗りですが、エース・パイロットなのであんまり死にそうにないかんじ。代わりに主人公の友人が死んじゃうというような、心揺さぶられるイベントもなし。
死者0ってわけじゃありませんが、「きっと助からなかっただろう」くらいの遠い感覚。身近に常に死を意識するような、死と隣り合わせのさしせまった状況じゃないです。
同室の友人・土岐野(トキノ)と遊びに出たり、整備士の笹倉や、女性上司・草薙水素(クサナギ・スイト)との交流とか、人間関係はいろいろあるんですが、どうも淡々とした戦場ライフ。
基地が攻撃されて話が一気に動くか?と思いきや、そうでもなくて。
このまま淡々とした描写のまま終わるんだろうな…と油断してたら、終盤で「キルドレ」についてトンでもない話がとびだす!
「ええーっ、そういう話だったの!?」と、この小説に対する認識を改める間もなく、あのラストへ。唐突についていけない展開になって、おいてけぼりの私。
読後感は、すごい閉塞感。出口なし、希望なしでした。森博嗣さんの「すべてがFになる」は「天才のやることはわかんないよ」という感想ですんだんだけど…。「スカイ・クロラ」は今の私には合わなかったです。
続刊が5冊くらいあるらしいので、もしかして全部読んだら印象がかわるかもしれません。
ちょっとツボに入った表現が、
流氷に乗ったオットセイみたいに嫌な予感がしていたんだ。
村上春樹さんの「ノルウェイの森」の
春の熊くらい好きだよ。
と同じくらいくらい気になりました。春の熊の場合は「気取りすぎだろ!」とツッコミましたが、オットセイは流氷の上でひなたぼっこするんじゃなかったっけ?オットセイの生態に特別くわしいわけじゃないけど。乗って嫌な予感がするなら、さっさと別の場所に移動しろ!と。違和感というか、妙に心に残る表現でしたよ。
この話をアニメ化して、どうやって希望のある話に?NHKのドキュメントを見直して、ようやく押井守監督のやりたいことがわかりましたよ。でも原作者の森博嗣さんとしては、ああいう形でアニメ化されたのはよかったのかな?原作とはずいぶん趣旨が違う気がするなあ。
アニメの「スカイ・クロラ」は関連本が何冊も出てるので、そういう話もどれかで読めるといいな。ぼちぼちチェックしていく予定です。
- タイトル:スカイ・クロラ (中公文庫)
- 出版社・発売時期:中央公論新社 (2004/10)
- ページ数:333
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