アニメ「電脳コイル」の完全ノベライズ版かと思って、全話放送終了後に読み始めた小説「電脳コイル」。ところが違ってました。
磯監督の原作アニメ「電脳コイル」をもとに、脚本家の宮村優子さんが独自の解釈を加えて作った小説でした。 だから世界観・キャラクター・その他の設定はアニメ版とは異なります。
…ということは、この本にでてくるキャラクターの心情をそのままアニメ版に当てはめることはできないってこと!? 「小説はアニメよりキャラクターの気持ちが詳しくてイイ!」という感想を聞いたことがあるけれど、 「アニメの補完ストーリーじゃない(=設定は似ていても別ストーリーです)」という前提があるのを忘れてはいけないのね。
そういう意味では「アニメで描かれなかった部分を補いたい」「アニメのストーリーを追体験したい」という人には向かないかな。
表紙はアニメのキャラクターデザイン・本田雄さん描き下ろしで、中の挿絵のデンスケ・カット集はアニメの設定資料集の流用みたい。 そして、ストーリーの大筋はアニメと似ているので余計勘違いしそうでややこしいです。
文体はライトノベル風味なので、慣れていない人は要注意。ライトノベル風なのにストーリー展開が遅いということにもやや違和感あります。
なお、小説はまだ完結していないので、完結後に各巻の感想がかわるかもしれません。
小説「電脳コイル」1巻感想
この1巻ではヤサコ・イサコが大黒市に転校。デンスケのイリーガル感染・駆除。イサコVS大黒黒客。イサコ、イリーガルからキラバグ抽出失敗まで。
全体的にやや暗いムード。イサコVSヤサコの対立がアニメよりくっきりしています。カンのいい女同士の戦いというかんじでちょっとやなムード。こういうどろどろした心情を詳しく語ってくれなくても…。 アニメの序盤はヤサコは積極的にイサコに関わらなかったのがウソのようです。
イサコはかなりすさんでいるし、ヤサコも裏表あるから下手すると女の子に嫌われそうなタイプでは?アニメでも序盤ダイチ、フミエの明るさは救いだったけど、小説でもそうなのね…。
今のところの謎は
1.タマコの友人ヨシフミ行方不明
2.キラバグを追い求めるイサコの目的
3.ヤサコの転校前の友人が消えた理由
このくらい。
謎でひっぱっていくつもりかな?猫目は小説ではアニメよりダメ人間になりそうな予感が…。
小説「電脳コイル」2巻感想
表紙イラストは総作画監督の井上俊之さん。
1巻で少しだけ登場していたハラケンが本格的に動き始めました。ストーリーはバスの墓場へメタバグツアーからハラケンとカンナのことなど。
ハラケンとカンナの話はアニメと似ているかんじ。今までの謎に「4.カンナの死の謎」追加。
「何かを失った」人たちをめぐるストーリーになりそうなかんじ。ヤサコ、イサコ、タマコ、ハラケン、そしてフミエ。フミエは「サッチーをやっつけたい」と言い出しましたよ。アニメではそこまで言ってたっけ?
アニメでは比較的ドライに描かれていた「何かを失った」人たちの執着。小説ではウェットというかやや妄執気味。
1巻のときにあげた3つの謎に関する新たな情報がほとんどなかったのも、停滞ムードにかんじます。タマコがメガマスの試作品めがねの被験者になったいきさつが明らかになったくらいかな。
小説「電脳コイル」3巻感想
1巻から3巻まで並べてみると背表紙の厚みのちがいが明らかに。337ページ→299ページ→249ページ。発刊ペースは順調だけど大丈夫なの?おねがい、マリリンマリーン!
カバーイラストは板津匡覧さん。
ストーリーは廃工場の一室に閉じ込められたヤサコとイサコから、夏祭り開始まで。ただし明るいお祭り描写ぬき。
そろそろ気になってきた展開の遅さ。3巻でアニメの8話くらいまで(アニメは全26話)。コミック版ほどの超展開じゃなくてもいいけど…。 お正月に放送された「電脳コイルスペシャル」のまとめっぷりを見ると、もっとスピーディーな内容でもいけそうな気がするので。
ただこの巻でイサコが自分とヤサコが夢を共有しているということに気づいたので、怒涛のオリジナル展開で終了してもおかしくはないです。
今回はハラケンが黒い。こんなに黒くてはアニメのようなさわやかエンドは迎えられるのか不安。それとも再会で一気に浄化されちゃうのか?このままではヤサコ・エンドは迎えられそうにないハラケンです。
3巻まで進んでも謎の解明が進まないのがややストレス。アニメの完全ノベライズならOKですが、序盤で謎を提示するなら各巻で少しずつ謎を解いていかないと飽きてきます。
せっかくアニメと違う設定なんだから、アニメと異なる「小説の魅力」をもっと見せてほしいかな。