「思い出のマーニー」の原作はアニメと全然違う件

スタジオジブリのアニメ映画「思い出のマーニー」は、原作と全然違っててがっかりしました。原作を読みましたが、キャラもセリフの内容もテーマも全然違うと思います。

私は圧倒的に原作派です。というわけで、ココから先は原作ファンのたわごととして読んでください(笑)。

アニメの脚本を作った人達は、たぶん私とは原作の解釈も異なるし、魅力に感じた点も全く異なるのだと思います。

アニメと違って、原作は設定もエピソードもかなり作りこまれてます。女性作者で女性が共感しやすい設定とエピソードになってます。

原作と比べると、アニメ「思い出のマーニー」はどちらかというと男性向けかなと思います。「あのセリフやエピソードを削ったり丸めるなんてとんでもない!」とか言いたいことが山ほどあります(笑)。

ただ原作の難点は、本を読みなれてない人には理解しにくい事。

私も最初はよく理解できず、読むたびに何度も解釈を変えながら進んで、ようやく理解できました。

「原作よくわからなかったよー」という人にちょっとだけネタバレ。原作で何度も出てくる「よき物をつかめ」の錨は、いろいろあるけど「安定感」の象徴と解釈していいと思います。

原作のアンナは不幸な生い立ちゆえに、身近な人を信じきることができません。信頼に足る相手だと思っていても、ちょっとした出来事で相手に対する不安感・不信感に囚われてしまいます。そのために友人関係も浅く長続きしません。

まるで、嵐に翻弄されるボートのように。小さな風にさえも、振り回されてしまう。

アンナはマーニーとの関係でも「裏切られた」と感じる出来事が発生。けれどもアンナはマーニーの時には逃げずに対峙する(=相手の真意を確かめる)事を選択。

その結果、アンナはマーニーの「アンナを傷つけるつもりはなかった」という弁明を信じます。他の人の場合は信じ切れなかったくせに、マーニーに限って信じた理由?それは原作を読めばわかります。理由は「血の絆」ではありません。

今まで身近な人を信じきることができなかったアンナが、ようやく「他者への強い信頼感」を獲得し成長。以降、周囲との人間関係がスムーズになるという流れになってます。原作では。

だからアンナがマーニーを許すシーンでは、うれしさにあふれて「許してあげる」と叫び返すんです。原作ファンとしては、ここでアンナがどんな歓喜の表情を見せてくれたか…って思うわけです。

今まで他人を信頼し切れなかったアンナが、ようやく他人を信じ続ける事ができるようになった。ここがカタルシスなんですよ。

他者を「許すことができるようになった」のではなく、他者を「信頼できるようになった」。ココ重要。

アンナはもう、人間関係のちょっとしたことで不安になって泣いたり、不信感に苦しんだりしなくてもよくなった。つまり心に錨を持ったということですよ。

さらにアンナの気持ちを思いやるがゆえに、言うべき事を言えなかった養母プレストン夫人も「アンナをもっと信じるように」とのアドバイスを受けて覚醒。

ここでお互いに相手を信じる事で、今まで言えなかった事を伝えあい、わかりあう。この流れもアニメより原作の方が上手。

アニメの流れだと、アンナがマーニーを許すことができた理由も、養母との和解の理由も浅くて、原作ファンとしてはちょっと不満です(笑)。

ちなみにおばさん目線だと、原作のアンナとマーニーはとてもかわいいです。アニメが消化不良だった読書好きは是非原作をどうぞ。