風立ちぬ(ロマンアルバム エクストラ)感想

目次

「風立ちぬ」のロマンアルバムは、最近の他のジブリのロマンアルバムと違ってかなり分厚い!!厚みはジ・アートと見まごうほど…いや、ジ・アートよりページ数多いです(笑)。

何のページが増えているのかと言うと、レイアウトと原画がグッと増えてます。それから今までならジ・アートに載せそうな「撮影技法」のページが割り増し!!

とりあえず「風立ちぬ」の場合は、レイアウトと原画とインタビューが好きな人は「ジ・アート」よりこの「ロマンアルバム」ですね。

「ジブリのロマンアルバムといえば、『フィルムストーリー+設定資料・背景美術ほどほど+原画少々+インタビュー』」と思ってた人が通常と違って戸惑いそうな内容ですが、原画レイアウト好きにとっては「これでよし! 」という内容でした。

以下、中身の説明。

アニメ設定資料集

アニメのキャラクター設定集。ジ・アート的な鉛筆画と違って、アニメ制作用にクリーンナップされた設定資料用線画です。

メインキャラクターから、名前があるのかないのか不明な設計室メンバー一覧(身長対比図的な)、二郎少年時代の児童達や市井の人々(震災の避難民)などのモブっぽい人達も。

ページ数は6ページ弱ですが、名前のあるキャラクターはほどほどの量がまんべんなく載ってますよ。

原画集、作監修正集

最近のスタジオジブリのロマンアルバムにつきものの原画集。ですが「風立ちぬ」に載ってる原画の量はいつものロマンアルバムよりずっと多いです。

原画といえば、キャラクタの動きのコマ送りみたいな連続した白黒線画集。震災で崩壊する街並みの背景動画や持ち上がる線路の原画は圧巻!!異なった方向へ逃げ惑う群集(モブ)の原画は、逃げる方向毎にグループ分けされて作画。ずいぶん手間がかかってます。

婚礼用の衣装で黒川邸の座敷に入ってきた美しい菜穂子のシーンの原画集(近藤勝也さん担当)。二郎が計算尺で構造計算するシーンの原画集(大平晋也さん担当)なども印象的。

それ以外にも「おお、あのシーン!!」と強く印象に残ってるシーンの原画があって、ワクワクしました。

ちなみに前述の計算尺シーンの原画は、原画担当の遊びが入ってる原画も1枚載っていて笑いました。忙しい中にも余裕ありますね(笑)。

原画好きには見所多いです。原画担当者のインタビューも多いので、そういう意味での読みどころ(?)も多いです。

ついでに言うと、作監修正集は全てキャラクターでした。

レイアウト集 draft: false

スタジオジブリのレイアウト展の図録にあったような、いかにもジブリなレイアウト集がたくさん掲載されてます。あの鉛筆で主線を描いて、色鉛筆で影をつけた描いたかんじの線画ですね。

今回のロマンアルバムは、かなりアニメ制作資料が豊富ですね。

そういえば最近は、アニメの設定資料・原画展が以前よりずいぶん増加気味。

原画やレイアウトは、以前だとマニア向けコンテンツという印象。原画展なんてわりとマイナーな小スペースでこじんまりとやってたものですが。最近はデパートの催事を含めわりと大きなハコでやってますよね。一般人もまきこんでお金がとれるコンテンツになったのかな?

最近のそんな時流に乗って、ロマンアルバムもその手の資料を増やしたかな? なんて思いました。

アニメ撮影技法

わりとマニア向けの「アニメ撮影技法」にもかなりページが割かれています。

もちろん撮影の画像処理とコンポジットも使って説明しているので、多少はわかりやすい…ですが、素人には少々難しいですね(笑)。

密着マルチ(&移動)とか、ハーモニーからセルへのオーバーラップとか、全面背景動画を用いた視点移動とか。

コンピューターに任せていい箇所は任せて、手描きで素材を用意した方がいいところは素材を使って撮影で工夫。

原画の押山清高さんのインタビューで、宮崎駿監督についてこんな風に語ってました。

「手描きでやれる制限の中でいかに効果的に面白く見せるか」という経験を積み重ねてきた、テクニックの引き出しをたくさん持っている人

アナログで出来る範囲を熟知しているから、どの撮影方法で見せるかも意味があることなのでしょう。

と、まあこんなふうに、今までに比べるとかなりメイキング重視な構成になってます。

フィルムストーリーなし

今回、ジブリのロマンアルバムにつきもののアニメ画像で構成したフィルムストーリーがなくて、名場面カット集に変更されてます。

そういう意味では、完成された絵を見ながら物語を把握したり、セリフの確認には向きません。

スタッフインタビュー

スタッフインタビューはいつも通り、メンバー数と量共にぎっしり(笑)。インタビューに関しては、いつものロマンアルバムのノリですね。

今回は宮崎駿×庵野秀明×松任谷由美対談があり、監督が直に語っているから、宮崎駿監督の意図がわかりやすいというのはいつもと少し違うところかな。いつもなら宮崎駿監督のインタビューはないので、作画その他各部署のスタッフの話から、宮崎駿監督の意図を垣間見るというかんじですから。


というわけで「風立ちぬ」ロマンアルバム感想

やはり「風立ちぬ」は手描きアニメにこだわる宮崎駿監督の集大成という印象ですね。「風立ちぬ」でいろんなシーンで出てくる群衆の動きは、やはり手描きとのこと。

私は手描きアニメの魅力と3DCGアニメの魅力は、少し異なると思ってます。

「風立ちぬ」には、長年手描きアニメを作ってきた宮崎駿監督の技がたくさん詰まってるかんじです。

ロマンアルバムはその「風立ちぬ」の魅力や見所をわかりやすく説明していると感じました。

もちろんそんなことを考えず「この原画すごい!」「きれい!」なんてノリで見て楽しむという楽しみ方もできます(笑)。

アニメのメイキング資料や舞台裏の話が好きな人なら、充分楽しめると思いますよ。

風立ちぬ (ロマンアルバム)
  • 出版社・発売時期:徳間書店(2013-10-11)
  • ページ数:285
  • 好感度:(5)
  • アニメ映画「風立ちぬ」ガイドブック
  • 名場面カット集
  • アニメ設定資料集
  • 原画集
  • 作監修正集
  • レイアウト集
  • 美術ボード集
  • 撮影技術と効果
  • 「風立ちぬ」用語集
  • スタッフインタビュー(作画監督、原画、動画、動画検査、美術監督、アフレコ演出、撮影監督、色彩設計、背景、ハーモニー、色指定、主題歌、音楽等の担当者)
  • 声優インタビュー(瀧本美織)
  • 宮崎駿×庵野秀明×松任谷由美
  • コラム少々
  • …etc.