風立ちぬ スタジオジブリ絵コンテ全集19 感想

目次

ジブリのアニメ映画「風立ちぬ」の絵コンテ集。「崖の上のポニョ」以来の宮崎駿さんの絵コンテです。

今回も「ポニョ」の絵コンテ同様、主線が黒鉛筆で、水彩で色を塗ったカラーの絵コンテ。そのため、イメージボードの集大成的な印象もありますね。

絵コンテはメイキング用の資料。ですから版権イラストなどと違うラフな線ですが、イイ味のある絵。

「ジ・アート・オブ 風立ちぬ」に載っている宮崎駿監督のイメージボードの量で満足できなかった人にはおススメかな。

絵コンテは、アニメの各場面ごとに絵+セリフで説明してあるアニメの設計書。プログラミングにたとえると、基本設計書相当かと。

通常ならその絵コンテを元に、画面の構図などの詳細を決めて描くのがレイアウトで、さらにそこからアニメの原画を描くという工程があります。

けれどもスタジオジブリの場合、絵コンテがレイアウトを兼ねていることが多いらしくて。スタジオジブリレイアウト展で展示されていたレイアウトの構図も、ほとんど絵コンテと同じでした。

要するに、ジブリの場合は絵コンテを見れば、素人にもだいたいアニメ本編の雰囲気がわかるってことです。

「風立ちぬ」は飛行機(というか戦闘機)もたくさん登場してますから、絵コンテにもたくさん飛行機絵があります。

絵コンテの説明文の中には飛行機に関しての宮崎駿監督の個人的なコメントなんかもあって、アニメではほとんど活躍してない(?)機体でも「ああこの飛行機大好きなんですね! 」みたいな事もわかりますね(笑)。

完成アニメと絵コンテの違い

映画「風立ちぬ」では、「アニメ本編のラストを変更した(当初の予定していたセリフを変更した)」というのがちょっと話題になってましたね。

この本では、絵コンテ自体は修正前のまま。巻末に完成アニメと、絵コンテとの違いについてまとめた一覧表があります。

「どこを変えたのかな? 」と見てみましたが…菜穂子のセリフ変えたのはたった1文字じゃないですか(笑)!

まあ1文字変えると意味が全然違うし、カプローニさんのセリフがけっこう変わってました。だからラストの夢のシーンがかなり異なるイメージになってますね。

変更前と変更後、どちらが良かったかと言われると…難しいですね。ただ、変更後の方がわかりやすいかと思います。

変更後はこの先にまだ人生が続いているかんじ。二郎の菜穂子への愛情と菜穂子の二郎への愛情がしっかり描かれていなければ、「何この身勝手男! 」というかんじですが(笑)。そこは誤解の余地がないように描けていたと思うし。

変更前だとちょっとわかりにくい。まだ40代なのにもう人生終わってる感があるし「…今更そんな菜穂子をイメージするって事は、もしかして後悔してる? 今更ジロー!!」とオヤジギャグをかましたくなるかんじではあります(笑)。

まあ気になる人は、確認してみるといいですよ。

ちなみに「風立ちぬビジュアルガイド」のインタビューによると、庵野秀明さんは変更前の絵コンテを見て「なんだ、これ? 」と思ったそうです(笑)。

ざっくりまとめ

絵コンテというのは、先ほども言ったようにアニメのメイキング用の資料。

かなりラフに描かれている場合もあるので、一般的にはアニメ制作関係者以外には面白くもないものです。

でもスタジオジブリの絵コンテは前述のように、絵コンテにしてはかなり精密に描かれています。しかも「風立ちぬ」の絵コンテはカラー。中盤あたりは2色カラー(?)の絵もありましたけどね。

ラフではありますが、宮崎駿さんの絵のタッチが好きな人には楽しめると思いますよ。

風立ちぬ スタジオジブリ絵コンテ全集19
  • 出版社・発売時期:徳間書店(2013-7-31)
  • ページ数:641
  • 好感度:(5)

追記:
変更前絵コンテは死後の世界なんだそうですね。変更後が生きてる世界だから、てっきり変更前も生きてる世界なのかと。

となると、「奥さんは心配して待ってたのね」ってかんじかな。