かぐや姫の物語 ビジュアルガイド感想

目次

「かぐや姫の物語 ビジュアルガイド」はジブリ映画「かぐや姫の物語」のガイドブック。内容はアニメファン向けと言うよりは一般向けという印象です。

角川書店のスタジオジブリ系ガイドブックと言えば、「内容はわりと薄いけど、とにかく発売時期が速い!!」というのが一番の売りだった印象(笑)。なのですが、最近異変アリ。

スタジオジブリの長編映画のガイドブックは、以前なら徳間書店一択。「借り暮らしのアリエッティ」の頃から角川書店が参入。

ジブリのガイドブックを買うなら、最近はこの2社のどちらかになると思います。

以前は徳間書店のロマンアルバムが、フィルムストーリーあって、作画資料(キャラ設定・原画・背景美術)、インタビュー豊富、解説充実。と、値段の割りにバランスのいい内容で、コスパ高い印象でした。

「角川書店のガイドブックより発売は遅いけど、内容とコスパを考えれば待ってもいいね♪」くらいのノリ。

がしかし、「風立ちぬ」からロマンアルバムの値段が爆上げ。その分ページ数も増えて内容も充実。コアなアニメファン向けになっちゃいました。

でもそうなると、アニメファンを名乗るほどではないけど「話題になってたから映画見たらよかった。ちょっと興味がでてきたからガイドブック買ってみようかな♪」的な一般層やライトファンが買う本をどうするのよ!? って話です。

ところが角川書店のガイドブックの内容が、最初の頃よりよくなってきてます。ノウハウ蓄積して一般向けに最適化してきたかんじ。

というわけで、前置きは長かったけど「かぐや姫の物語 ビジュアルガイド」の感想です。

「かぐや姫の物語 ビジュアルガイド」内容

「かぐや姫の物語 ビジュアルガイド」はA4縦より少し小さいけど、わりと大きな本。ページ数も100ページほどあるし、本が大きいので内容もそこそこあります。

映画の画像と文章で綴るフィルムストーリーはオチまでわかる内容。

フィルムストーリーの脚注に物語中の用語解説みたいなものはついてますが、物語の解説はないと思っていいです。

「かぐや姫の物語」の話の解釈とかわかりやすい考察希望の人にはやや不向きかと。

しかしですね、この本には高畑勲監督による「『竹取物語』とは何か」という企画書原文が全部載ってます。A判縦サイズの大判本に、小さい文字で4ページみっしり。東京大学文学部仏文科という経歴は伊達じゃない(笑)!!

長いだけじゃなくて「論文か!!」と言いたくなるような、堅い内容。文章自体は中学生程度でも読めると思うけど、内容が…。

最近堅い本を読んでない私も、読むのに一苦労。いや、読むのは読めるけど、内容を脳内で咀嚼して再構成するのが大変で(笑)。

でも臆することはありません、それをもうちょっとわかりやすくした「企画『かぐや姫の物語』」という文章(1ページ)が載ってます。もちろん高畑勲監督の文章。いわゆる企画書の文章かと思います。

これも確かに小さい字でぎっしりの1ページですが、これはプレゼンに使われそうなわかりやすい文章です。

この2つを読めば、察しのいい人ならだいたい高畑勲監督の意図が理解できるのではないでしょうか。

下手な解説がつくよりは、映画を見てから足りない部分はこれを読み解いた方がいいかなと思います。

キャストインタビューは例のごとく声を演じた俳優さんのポートレート写真がドーンと。インタビューの量は基本的な質問事項をほどほど。

設定資料はちょっとだけ

キャラクター設定資料は、人物造形・作画設計の田辺修さんのインタビューページに。背景美術は、美術担当の男鹿和雄さんのインタビューページに。それぞれまとめられてます。

「かぐや姫の物語」の場合は、完成画がああいう絵なのでキャラクター設定もこれがラフ設定なのかどうか、ちょっとわかりません。

とにかく黒鉛筆で描いたキャラクターの設定画が載ってます。一部色鉛筆で彩色アリ。女童の設定画が岸田劉生の娘・麗子の肖像画みたい…(笑)。

そして絵コンテも数枚紹介。原画はなし。美術もカラーで数枚載ってます。

「メイキング資料はほどほどに見ることができればいいか」くらいの人にはいいでしょう。

まあそれよりも、田辺修さんのインタビューの中で「高畑勲監督は絵コンテ描かない人という話が一人歩きしてるけど、実はラフ絵コンテくらいは昔から描いてますよ。」という話に驚きました。

…そりゃそうですわ。いくら東大文学部卒でも、短いものでも数十分、長いものでは数時間にも及ぶアニメ作品。画面構成ひとつとっても、視覚イメージを言葉だけで正確に伝えるなんて無理すぎますわ。

なんて話は、わかってしまえば言えること(笑)。やはり、一次ソースが確認できない話を鵜呑みにしたらダメですね。

というわけで、長々と話しましたがまとめます。

フィルムストーリーが丸ごと読めて、キャストインタビュー、スタッフインタビューもほどほど。メイキングのキャラクター設定、美術少々。そして比較的お手軽な値段。

作品プレイバックするもよし。高畑勲監督の企画文を頭をひねりながら読み解くのもよし。高畑勲監督にアニメを作らせるのがいかに大変だったかという苦労話を楽しむのもよし(笑)。

メイキング資料をたくさん見たい人には向きませんが、一般ファン向けとしてはほどほどの内容だと思います。コスパ的にもまあまあですね。

かぐや姫の物語 ビジュアルガイド
  • 出版社・発売時期:角川書店(2013-11-21)
  • ページ数:115
  • 好感度:(4)
  • ジブリの「かぐや姫の物語」ガイドブック(わりと一般向け)
  • フィルムストーリー(最後まで)
  • キャストインタビュー
    • かぐや姫:朝倉あき
    • 捨丸:高良健吾
    • 翁:地井武男
    • 媼:宮本信子
    • 女童:田畑智子
    • 相模:高畑淳子
    • 斎部秋田:立川志の輔
    • 石作皇子:上川隆也
    • 大伴大納言:宇崎竜童
    • 御門:中村七之助
    • 車持皇子:橋爪功
    • 北の方:朝丘雪路
    • 炭焼きの老人:仲代達矢
  • かぐや姫ができるまで(制作年表)
  • スタッフ・インタビュー
    • 人物造形・作画設計:田辺修(4ページ(キャラ設定込み))
    • 美術:男鹿和雄(4ページ(背景美術込み))
    • 企画:鈴木敏夫
    • 音楽:久石譲
    • 脚本:高畑勲、坂口理子
    • 主題歌:「いのちの記憶」歌:二階堂和美
    • PD:西村義明
    • 音響制作デスク・石上中納言:古城環
    • 新人スタッフ座談会
  • 高畑勲「『竹取物語』とは何か」(企画書原文丸ごと)4ページ
  • 企画「かぐや姫の物語」高畑勲(1ページ)
  • 高畑勲×伊集院光(4ページ)
  • …etc.