「THE ART OF TALES from EARTHSEA - ゲド戦記」感想

スタジオジブリのアニメ「ゲド戦記」のアートブックです。ロマンアルバムには載ってなかったイメージボードがたくさん載ってます。

はてみ丸やいかだ族の初期イメージボードがあるじゃないですか!!原作3巻に忠実な内容で構想を練っていた時期もあったのですよ。本編で使われたものはもちろん使われなかったイメージボードまでてんこもり。

いかだ族の女の子いいじゃないですか。前半は登場しないから華やかさには欠けるけど、このイメージで作って欲しかったなー。

監督のイメージを元に作画演出の山下明彦さんが描いたアレンの初期キャラクターラフもいいですよ。騎士見習い風の絵で、親を刺して国を逃げ出すことはなさそうな安心できるキャラクター像。

ハイタカは様々な案があったみたいだけれど、82ページ左下くらいの方がよかったかな。アレンもハイタカも初期イメージの方が原作寄りなので、原作既読の私からすると初期案の方がしっくりきます。

「どうしてそのまま進めなかったか?」その理由はこの本の中のインタビューで監督が述べています。ロマンアルバムでも軽く触れていましたが、こちらの方が「原作のどの巻を使うか」紆余曲折した流れについて詳しく語られていますよ。

掲載されている絵には、監督や主要スタッフのコメントがいくつかついています。ストーリーに沿った各場面でそれぞれの絵にコメントがあるので、監督やスタッフがどういう意図でこの場面を作ったか(演出したか)が、より深くわかります。

アニメの制作意図に関しての話は、ロマンアルバムよりこの本の方が詳しい印象ですよ。

では、アートブックとしての全体の満足度はというと…ちょっと低いです。

理由は、正直申し訳ないけれど「監督の絵」かな…。建物のラフ絵は上手いですよ。さすが本業。でも、人物のイメージ画が…。

制作日誌の監督ブログでスタッフから「宮崎駿監督の絵に似ている」といわれた、という話があったと思うのですが、何のしがらみもない一般人の目で見て言わせていただくと「それは社交辞令」。

アレンやクモの初期案の髪型の古さに正直びっくり。絵は古いし、ジブリ風でもないです。この絵も含めて今までの「THE ART OFシリーズ」と同じ値段を出すのはちょっときついです。

今までの「THE ART OFシリーズ」だと、作画監督のキャラクター設定画やキャラクターラフだけでなく「宮崎駿監督のイメージボードがたくさん見られるから」という理由で買っている人は多いはず。

この本には宮崎駿監督の絵はホートタウンのイメージイラスト1枚のみ。この値段を出すことに対して、自分に言い訳しづらい気持ちが。

とはいえ、山下明彦さんや奥村正志さんのイメージボードは、初期イメージも含めてなかなか捨てがたい。原作好き、もしくは余裕のある人は是非見ておくといいですよ。

THE ART OF TALES from EARTHSEA―ゲド戦記 (ジブリTHE ARTシリーズ)
  • 出版社・発売時期:スタジオジブリ(2006-08)
  • ページ数:253
  • 好感度:(2)
  • 内容紹介
  • アニメ映画「ゲド戦記」アートブック
  • インタビュー(宮崎吾朗監督、山下明彦作画演出担当、奥村正志原画担当、稲村武志作画監督、武重洋二美術監督)
  • 美術ボード
  • 背景画
  • イメージボード
  • キャラクター設定(初期案から決定稿まで)
  • アフレコ台本
  • …etc.