安部吉俊さんのマンガ「回螺(カイラ)」。ようやく感想が書ける程度に読み終えました(笑)。

あとがき読んで少し理解して、もう一度漫画を読み返して、さらに出てきた疑問をあとがき読んで解決して、以下無限ループ。こんなかんじで理解するのに時間がかかりました。

安部吉俊さんといえば「NieA_7(ニア・アンダーセブン)」みたいなコミカルな話か、「シリアルエクスペレメンツ・レイン(これはキャラデザ参加だけど)」「灰羽連盟」みたいな重いテーマのどっちだ!? と迷われるかもしれませんが、「回螺」は重いテーマの方です。

初版の帯には「暗黒漫画四部作」と書かれていたそうなんですが、このコピーを考えた人Good Job! 的確過ぎてスゴイです。

「回螺」には安部吉俊さんの漫画が4つ収録されてます。

  • 「古街」(初出:「FLAT」、1998年カラー)
  • 「樹葬」(初出:「月刊エースネクスト」、2000年カラー)
  • 「廃域」(初出:「robot」連載カラー)
  • 「白雨」(初出:同人誌、1996年モノクロ)

同人誌に掲載された「白雨」以外はカラー漫画。

「樹葬」は連載されていた「月刊エースネクスト」が休刊になったので未完のまま収録されてます。

「古街」「樹葬」は自転が止まりつつある星が舞台。ヒトと、人が人に似せて作った人形「ウツロ」達が住む世界。

人の未加工素体とウツロのハイブリッドであるルキット・メイオウが主人公…かな。

ヒトの部分を残したままウツロとしてふるまうことができるルキットが、ヒトとのコンタクトを目指して旅立つのが「古街」。

その旅の途中での出来事が「樹葬」ですが、「え、ここで終わり!? 」というぐらい中途半端な部分で終わってます。せっかく本になったんだから、この続きもつけてほしかったところです。

「廃域」「白雨」は「古街」「樹葬」とは別の登場人物で別の舞台が描かれてますが、あとがきを読むと一応話もテーマもつながってることになりますね。

あとがきを読む限り、この4作はどれも大きなストーリーの中の断片でしかないので、これだけでは作品としての評価はできないと思います。

あとがきで安部吉俊さん曰く、テーマは「意識を発生させるものは何か」。

「廃域」「白雨」はエンリ・ハミルという少女の記憶データを元に、意識をもった人口知性体を作るための実験として仮想空間行われている「分割した意識の統合実験」の話。

お互い殺しあい捕食することで記憶を統合していく話なので、見た目がとってもバイオレンス。顔を剣で横殴りにたたき切ったり、流血度大。そういうのが苦手な人は読まないように。

記憶を統合していくだけならこんなバイオレンスな表現を選ぶ必要はない気もするんですが、この話は安部吉俊さんが19~21歳くらいの時に思いついた設定をもとに作っているとか。

「こんなバイオレンスな絵だけど、実は肉体のない意識だけの話」と思って許しましょう(笑)。

捕食も水と食べ物がない世界で、他者を取り込んで上の階層へ上がれるのは1人だけという設定ですから。

とにかくどの話も断片的なので、あとがきを読みこまないと意味がよく理解できないのが玉にキズ。しかもあとがきに書かれている設定が難解。

テーマや設定自体は興味深いのでハマる人もいるでしょうが、なにしろ漫画の方は断片的で中途半端。

安部吉俊さんのファン以外にはちょっとおススメしづらい内容ですね。人を選ぶ本です。

タイトル:回螺 (WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL)
出版社・発売時期:ワニマガジン社(2008-06-26)
ページ数:225
総合評価:4

内容紹介

  • 安部吉俊さんのマンガ4編
  • 「古街」(カラー)
  • 「樹葬」(カラー)
  • 「廃域」(カラー)
  • 「白雨」(モノクロ)
  • あとがき(2ページ)

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